戦いを否定してから
…ふう。
ここからが私の戦いよ。
「みなさんにお願いします。私の話を聞いてください。」
ルーンを発動してから魔術の準備を進めていく。
「私は誰かが傷付く姿なんて見たくありませんし、誰かを傷付けることもしたくありません。」
だからこそ願うの。
「私はみなさんの生存を希望しています。」
想いを込めて展開するのは『楽園』という名の魔術になるわ。
「ヘブン・オン・アース!!!」
傷つき倒れた兵士達の体を優しい光で包み込む。
そうして御堂君の攻撃によって受けていた全ての怪我を治療したのよ。
「…もう一度お願いします。私の話を聞いてください。」
「「「「「………。」」」」」
祈りにも似た想いで語りかける私の行動に戸惑う様子の兵士達だけどね。
それでも私は私の想いを伝え続けることにしたの。
「私達の力は人を殺せる力です。その事実は認めます。」
願うだけで命を奪えることも真実だから。
御堂君が陸軍の部隊を全滅させるだけの力を持っているように。
魔術という名の力は人々に恐怖を与えるに価する力だと認めているの。
「ですが私達は争う為に力を使いたいとは思っていません。」
そんなくだらないことのために力を求めたわけじゃないからよ。
「私達はただ守りたいだけなんです。」
大切な人を。
大切な場所を。
大切な思い出を。
ただ守りたいだけなの。
「私達だって本当は争いなんてしたくないんです。」
魔術は誰かを傷付ける為にあるわけじゃなくて、
大切なモノを守る為にあるの。
「そして…私達の想いはきっと、みなさんも同じだと思います。」
お互いに憎み合って殺し合う。
そんな関係を望む人なんていないはずよね?
「だから…だからお願いします。もう止めませんか?」
これ以上戦い続けてもね。
きっと悲しい想いが残るだけでしかないわ。
それにね。
傷付け合うことで得られる未来が幸福だとは思えない。
「このまま戦い続けても…きっと最後に残る結末は悲しみだけです。」
戦いの先に待つ結果なんて悲しみでしかないわ。
言い方を変えれば絶望でもあるでしょうし、
後悔でもあるでしょうけどね。
どちらにしても負の連鎖でしかないと思うのよ。
「みなさんにも大切な家族がいるように、私達にも守りたい人達がいるんです。」
私達もそうでセルビナの人達にしてもそれぞれに大切な人がいて、
それぞれに自分を愛してくれる人達がいるはずなのよ。
「そんな大切な人達に悲しい想いを残さない為に…。戦うことを…傷付け合うことを…殺し合うことを…止めませんか?」
誰かが死ねば、
その人を想う誰かが涙を流すことになるから。
そんな絶望的な未来を私は否定したいと思っているの。
「お願いします。戦いを止めてください。私達は敵ではありません。魔術師はみなさんの敵ではありません。私達は争う為に力を持っているわけではないんです。戦争をする為に…人を殺す為に力を持ったわけではないんです。」
戦争を望んでいないということ。
そして戦うことを望まないという想いを伝えたの。
「みんな大切な命です。死んでも良い人なんて一人もいません。」
一人一人にただ一つ。
「命をもっと大切にしてください。戦争なんて必要ないはずです。大切な人が死んでいく未来に幸福は在りません。殺し合うことで辿り着く未来に幸福なんて在りません。」
何度も何度も戦いを否定してから、
ゆっくりと魔術を解除したのよ。




