愚問
「黒柳所長。」
「…ん?」
背後から呼び掛けられたことで振り返ってみると。
御堂君が吉報を知らせてくれた。
「岩永一郎に大森遼一、梶原裕美と伊倉信夫の4名が昏睡状態から復帰しました。それと藤沢さんも目覚めたようです。」
「おお!」
…ついに目覚めたか!
担架によって運ばれていた西園寺君達がついに目覚めたようだ。
「…ですが、西園寺さんだけはまだ目覚めていないそうです。」
「やはり…西園寺君だけは遅れるか。」
「はい。栗原さんの判断では数時間以内に目覚めるとのことでした。」
…そうか。
残念ながら西園寺君だけは目覚めないようだ。
まあ、西園寺君は魔力の総量という意味では6人の中で最も高いからな。
完全に回復するまでに時間差が発生するのは必然と言えるだろう。
「ひとまず藤沢君達が目覚めただけでも喜ぶべきか。」
ようやく訪れた吉報によって作戦を組み直すことが出来るようになったのだ。
南門を守護するセルビナ軍を眺めながら、
御堂君に問いかけてみる。
「一つ聞くが…1万の陸軍を死なせずに制圧する自信はあるか?」
「………。」
俺の問い掛けを聞いて少し悩むような御堂君だったが、
しばらくしてからしっかりと頷いてくれていた。
「やってみます。それが両国の為になるのなら、必ず成功させてみせます。」
…ほう。
頼もしい限りだな。
不殺の誓いを守り抜くつもりなのだろうか。
御堂君は力の制御に集中力を込めている様子だった。
「僕を信じて頂けますか?」
…ははっ。
信じる、か。
それは愚問というものだ。
「当然だ。きみだけが頼りなのだからな。」
はっきりと断言しておく。
「きみの力が俺達の理想を実現するのだ。俺はいつでもきみを信じている。」
「…ありがとうございます。」
俺の返事に満足してくれたようだ。
話を終えた御堂君は、
単独で王都の南門に近づいて行く。
仲間を巻き込まない為に。
一人でも多くの命を守り抜く為に。
たった一人でセルビナ軍と対峙したのだ。
「「魔術師が動き出したぞっ!!」」
「「迎撃準備を整えろっ!!」」
「「魔術師の攻撃から門を守れ!」」
「………。」
張り詰めた緊張感の中で殺気立つセルビナ軍の様子を眺める御堂君は左手にルーンを生み出して力を込めている。
「これが最後の戦いになると信じて、僕は僕の想いを貫き通す!!」
守るべき命の為に戦場に立ってくれたのだ。
「総魔の代わりに僕が共和国を守り抜く!そしてセルビナ王国も守ってみせる!」
もう二度と悲しい想いを残さない為に。
もう二度と大切な命を失わない為に、だ。
「この一撃に想いを込めるっ!!」
不殺の誓いを現実とする為に。
御堂君は前方に立ち塞がる陸軍への攻撃を開始した。




