全滅回避
《サイド:米倉宗一郎》
「…まさかこれほど早く来てくれるとは思っていなかったぞ。」
砦において絶望的な戦いを強いられていた俺達はすでに全滅を覚悟していたのだが、
砦からの撤退が完了するよりも先に8万に及ぶ援軍を引き連れた桜井由美が救援に来てくれたのだ。
「グランバニアにいた陸軍の協力のおかげで予定よりも早く部隊が集結したから何とか間に合ったのよ。」
…ほう。
俺達がグランバニアを離れたあとも、
可能な限りの戦力をかき集めてくれていたらしい。
そして大急ぎでカリーナ北部の国境に到達した由美は、
進藤輝彦の部隊から現在の状況を聞いてカルナック山脈の西部で俺達が部隊を展開していることを知ったようだ。
「ナルベウス渓谷の大河を渡るのに苦労するかと思ったけれど。溶け切らずに残っていた氷の橋のおかげで氷の強度を補強する程度で済んだから、さらに予定よりも急ぐことが出来たのよ。」
…ああ、なるほど。
殆ど溶けかけてはいたようだが、
辛うじて残存していた氷の橋を再利用することで時間短縮を行いつつ、
俺達が布陣する戦場に駆け付けてくれたらしい。
「とりあえず、あとは私達で何とかするわね。」
俺の部隊を後方へと下がらせた由美が進軍を開始する。
「後方で待機していて良いわよ。ミッドガルム軍は私達が抑えるから、安心して任せておいて。」
「大丈夫なのか?」
「ええ、頭数は十分だしね。数ではミッドガルム軍の半数程度かもしれないけれど、ここまできて負けてられないわ!行くわよっ!!全部隊、攻撃開始っ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」」」」」
指示を受けて戦場に駆け出す混合部隊。
さきほどまで全滅確定だった戦況が、
由美の部隊の参戦によって一気に共和国軍の優勢へと流れが変わっていった。
「これも一つの奇跡ですね。」
…ああ、そうだな。
長野君の意見には同意するしかない。
由美の到着によって全滅の危機を免れたのだからな。
「こうなると残る問題は竜の牙だな。」
この戦闘が終わる頃に攻撃を仕掛けて来るであろう竜の牙の動向を気にしつつ、
残存する部隊を再編成するために移動することにした。




