ラストエクリプス
「シャイニング・サークル!!」
…え?
突如として女性の声が戦場に響いたの。
そして、その瞬間に。
死を覚悟していた私達の周囲を光の結界が包み込んだのよ。
「な…何っ!?何なのっ!?」
突然の出来事に戸惑ってしまったせいで、
百花に想いを告げることさえ忘れてしまっていたわ。
「誰の魔術なのっ!?」
聞いたことがない声だったの。
思い当たる人物がいないことで混乱してしまったんだけど。
その間にも大規模魔術が発動しようとしていたわ。
「共和国が禁じた魔術の恐ろしさを思い知りなさいっ!!」
さっきとは別の女性の声が戦場に響き渡った直後にね。
膨大な魔力が力に変わる感じがしたの。
…な、何これっ!?
今まで感じたことがないような圧倒的な威圧感。
絶望を感じさせる程の何かに気付いた直後に誰かの魔術が発動したみたい。
「禁呪…ラストエクリプス!!」
…禁呪?
騒音と怒号が響き渡る戦場。
それでもはっきりと聞き取れた誰かの声。
展開された魔術名を聞いた直後にね。
私達は真の破壊を目の当たりにしたのよ。
…う、嘘でしょっ!?
夜の闇を切り裂く光。
そこに神聖さなんて微塵も感じられなくて、
ただただ恐怖だけを感じるような異様な輝きだったわ。
…何なのよ、これっ!?
寒気を感じてしまうほどの閃光。
目が眩むほどの光に気付いた直後に、
全ての音が戦場から消え去ったの。
…音が、消えたっ!?
この現象は私も知ってる。
実際に見たことはないけれど。
噂としては聞いているから。
何が起きているのかは分かるの。
…これは、アレよね?
天城総魔が生み出して、
翔子に受け継がれた極大魔術。
あの『アルテマ』に匹敵するほどの魔術が、
私達の周囲で破壊と殺戮を巻き起こしたのよ。
…だ、誰が、これを!?
絶望的な破壊を巻き起こしてから遅れて発生した爆発音。
周辺一帯を吹き飛ばす大破壊に恐怖を感じて震えてしまったわ。
そうして様子を見ている間に爆音が消えて、
魔術の余波が消え去ったあとで驚くべき現実を目の当たりにすることになったのよ。
「ミッドガルム軍が…全滅…っ!?」
「「………。」」
兄貴も百花も言葉を失うくらい驚いてる。
そんなふうに言葉さえ出ない状況の中で、
二人の女性が私達に歩み寄ってきたの。
「ふぅ。ギリギリ間に合ったわね。」
「んん~?」
落ち着いた雰囲気で微笑む女性に、
結界を発動したと思われる女性は苦笑しているみたい。
「陸軍は壊滅してるから、どちらかと言えば間に合ってないと思うけどね〜?」
「それでも生存者がいるならまだマシよ。」
「まあ、それは…ね。」
二人は短い会話を終えてから私達の傍で足を止めたわ。
「初めましてジェノスの生徒さん達。私は上矢遥。エスティアの生徒よ。」
…エスティア?
それって確か…カリーナからそこそこ近い町の名前よね?
お隣のヴァルセムと比べると距離があるみたいだけど。
近隣の町なのは間違いないはずよ。
「…で、私は笹倉美和子よ。学園の成績は2位で遥が1位だけど…魔術大会に参加してないと知らないかもしれないわね〜。」
…あ、あ~、なるほど。
二人とも学園上位の生徒なのね。
番号的に見れば私達よりも遥かに格上なのは間違いないわ。
「助けに来てくれたの?」
「ええ、そうよ。」
結界を解除してくれた笹倉さんがここに来た理由を教えてくれたの。
「共和国の増援部隊が到着したわ。ちゃんと動けるのなら、南の国境側に撤退しましょう。」
…へえ~。
援軍が来てくれたんだ?
思ったよりも早かったわね。
「だからもう大丈夫よ。」
自信をもって宣言しながら、
上矢さんが救いの手を差し延べてくれたわ。
「私達が来た以上、ミッドガルムの好きにはさせないから。」
「あ、うん。ありがとう。」
絶対の自信を持って迎えに来てくれた二人の手助けに感謝しながら、
ひとまず私達も砦の南部に後退することにしたのよ。




