好きなようにしなさい
…ちょっと!?
「兄貴っ!兄貴~~~っ!!」
必死に呼び掛けてみる。
だけど兄貴は何も応えてくれなかったわ。
すでに意識を失っているから。
身動き一つ取れなかったのよ。
…だけど。
「この程度の怪我なら、すぐに私が…!」
治療してみせると思ったんだけどね。
そうそう上手くはいかないみたい。
「…う、嘘でしょ?魔力が足りない…っ!?」
今更だけど私の魔力も底を尽きかけていたの。
こうなるともう生き延びる為に精霊を維持するのか?
それとも兄貴を助ける為に治療を優先するのか?
どちらかしか選べないわ。
…どうすればいいの?
考えてみるけれど。
悩む理由なんてないわよね?
「…例えどんなにキモい兄貴でも、私を庇って死ぬなんて許せるわけがないじゃない!!」
例え兄貴の想いがどれほど狂っているとしても、
私を愛してくれる人を見捨てることなんて出来ないのよ。
「ごめんね…百花…。」
たった一人の親友に謝罪してから精霊を解除する。
「変態兄貴っ!どうせ死ぬのなら私がいない所で勝手に死んでよね!!」
自分でも滅茶苦茶な発言だと思うけれど。
それでも兄貴の治療を優先することにしたの。
「さっさと起きなさいっ!!」
引き抜いた矢の傷口から溢れる出血を魔術で止めて兄貴の治療をすぐに終えたわ。
…でもね。
治療を優先してしまったことで、
精霊の守りを失った私達はミッドガルム軍に完全に包囲されてしまったのよ。
…結局、結果は同じなのかな?
すでに共和国軍の助けは望めない。
魔力の限界に達する私達に逃げる手段もないから。
例え兄貴が復帰しても、
私達の死は確定してしまっているのよ。
「ごめんね、百花。」
「ふふっ。良いのよ。里沙は自分の好きなようにしなさい。」
最後まで優しく微笑んでくれた百花は絶体絶命の危機的状況でも私を責めようとはしなかったわ。
「大好きよ里沙。私の大切な親友。あなたと出会えて本当に良かった。」
…あうぅぅ。
そんなふうに言われたら泣いちゃうじゃない。
「百花…。私も百花が…」
『大好き』って伝えるその前にね。
私達3人はミッドガルム軍に飲み込まれてしまったの。




