里沙の悲鳴
《サイド:芹澤里沙》
「…ごめん。もう、無理…っ!」
…って言うか、すでに無理っ!!!
魔力の限界が近づいてきたことで、
ついにしゃがみこんでしまったのよ。
「もう動けない…。」
そもそも一日中逃げ回りながら敵の接近を防ぎ続けるなんて無茶がいつまでも出来るわけがないのよ。
「…眠いし、しんどいし、吐きそう。」
食事も睡眠もなし。
そのうえ休む暇もないっていう状況なんだから。
…これで2日も3日もなんて続けられるわけがないわ。
「せめて寝させて…。」
少しだけでも眠れば少しは気力を取り戻せると思うんだけど。
どうもそれさえ許してもらえないみたい。
「立ち上がりなさい里沙!」
百花に怒られてしまったのよ。
「ここで動きを止めれば、ミッドガルム軍の狙い撃ちになるわ!」
…ええ。
それは分かってるんだけど。
気力だけじゃどうしようもないことってあるわよね?
「分かってるけど、でも…」
体がいうことを聞かないのよ。
どれだけ望んでも蓄積した疲労は消えないの。
「もう…動けないの。」
これは甘えじゃなくて限界なのよ。
丸一日もの間、
魔力を消費し続ける疲労は精神的に極度の負担をかけていたから。
「ごめんね、百花…。」
「…はぁ。仕方がないわね。」
素直に謝罪したことで、
百花は本当に私の限界を感じてくれたみたい。
「まあ、ここまで頑張れたことが奇跡なのかもしれないわ。」
私を守る為に盾になってくれている百花だけど。
やっぱり百花にだって限界があるのよ。
「そろそろ逃げるしかないかしら?」
…かもね。
私も百花も強くなんてないから。
潜在能力に覚醒したり。
新たな力を手にしたりしたけれど。
それでも御堂君や大塚義明には遠く及ばないのよ。
今の力を封じてる状態の淳弥には勝てるかもしれないけれど。
力を解放した淳弥に勝てる保証なんてどこにもないし。
私達はまだその程度の実力でしかないの。
「…とは言え、逃げるのも難しそうね。」
…まあ、ね。
限界を訴える私を守りながらミッドガルム軍から逃げようとする百花だけど。
敵に囲まれた状態で逃げるのって難しいと思う。
これまでは私の精霊の援護があったから戦えていたけれど。
このまま私が倒れれば精霊の援護も消えてしまうから。
「それでも里沙を守る為にはここから逃げるしかないわね。」
私が力尽きる前に。
精霊が消失する前に。
ここから離脱しようと考えてるみたい。
だけどミッドガルム軍は容赦なく襲い掛かってくるのよ。
「突撃しろーーっ!!!」
「「「「「うおおおおおおおっ!!!!」」」」」
…うぁぁぁ。
武器を構えながら攻め込んでくるミッドガルム軍の軍勢。
数千単位の敵部隊が迫ってきたことで、
百花が立ちはだかってくれていたわ。
「里沙に手出しはさせないわ!!」
必死の防衛を試みる百花だけど。
単独でミッドガルム軍を抑えるなんてどう頑張っても無理なのよ。
「共和国軍を押し潰せーーっ!」
「怯むなっ!!押し戻せーーっ!!」
勢いに乗って攻め込んでくるミッドガルム軍に対して残存する共和国軍も立ち向かっているけれど。
それも数分で壊滅してしまうでしょうね。
「どうにかしてここから逃げないと…。」
焦る百花。
その隙をついて放たれたミッドガルム軍の矢が百花の間近を通り過ぎてしまう。
「…しま…っ!?」
…ちょっ!?
私に当たる~!!!!
恐怖に顔を引き攣らせる百花が急いで振り返ろうとした瞬間に『ドスッ!!!!』と矢が突き刺さる音が響いてしまったの。
…くっ!?
「里沙ぁぁぁっ!!!!」
叫び声をあげながら背後を確認する百花の視線の先で。
「い、いやああああああっ!!!!!!」
私の悲鳴が戦場に響き渡ったのよ。




