一日で限界
《サイド:米倉宗一郎》
…時間が過ぎるのが早いな。
もう日付が変わる時間らしい。
昨夜から続く戦闘。
ミッドガルム軍との戦いは今もまだ続いているのだが共和国側の劣勢は覆らない。
これまでに幾度も訪れた全滅の危機。
それらを辛うじて耐え凌ぎつつ絶望的な戦いを強いられていた共和国軍だったが、
どうにか日付の変わり目を迎えることはできたようだ。
「まずは1日を堪え抜いたか。」
夜が明けて昼間を堪え続け、
日が沈んで再び夜を迎えてからは僅かながらもミッドガルム軍の攻撃が弱まったことによってギリギリのところで全滅の危機を回避していた。
…本当にギリギリだがな。
「こちらの戦力はどうなっている?」
「報告致しますっ!」
傍に控えている伝令部隊に問いかけてみると、
即座に各地の情報を報告してくれた。
「南門の防衛には成功していますが、絶え間なく続く攻撃によって東西の防衛は限界に達しているようです!」
主戦力である芹澤君達3名が倒れる寸前のようだ。
そして西側の守備についている大塚義明君も魔力を失いつつあるらしい。
…これも当然か。
精霊による戦闘は魔力の消費という意味では最も効率の良い戦い方だ。
一度召喚した精霊は魔力が失われない限り消え去ることはないからな。
だがそれでも無制限ではない。
徐々に減少していく魔力を一日中維持しているだけでも相当な無茶になるだろう。
…これ以上は難しいか。
精霊が戦闘を行っている間に術者は魔力の回復に努めることが出来る。
だからこそ長期戦を堪え凌ぐことが出来るのだが、
それでも限界は訪れてしまう。
消費に対して回復が追いつかなくなれば魔力が尽きるのだ。
そうなれば精霊は失われて、
砦の防衛力は一気に低下するだろう。
「丸一日を堪え凌げただけでも幸運としか言いようがないな。」
それだけでも奇跡的だと思える。
「ミッドガルム軍の軍勢はどうなっている?」
「夜の為に正確な判断が出来ませんが、あまり減少していないと思われます。」
17万から多少減った程度らしい。
「本来なら魔力の回復の為に待機すべき部隊も前線に送り込むことでミッドガルム軍の侵攻を防いでいますが、その結果としてこちらは交代要員を用意出来なくなりました。前線部隊の魔力が尽き次第、全滅が確定すると思われます。」
…だろうな。
全ての魔術師が軒並み魔力を失う事態になりかねないのだ。
そうなれば時間稼ぎすら不可能になる。
そうして一切の抵抗が不可能になれば、
死を待つしかないという状況になってしまうだろう。
…ふう。
たった一日を堪え凌ぐだけで限界とはな。
やはり数の力には勝てないらしい。
その事実に直面してしまったところで、
ついに最悪の事態が訪れようとしていた。




