退路は断った
《サイド:黒柳大悟》
午後7時を過ぎて夜の暗闇が空を支配する頃。
俺が率いる海軍は船から下りて町の北部に集結していた。
「これよりセルビナの王都を目指して進軍する!!」
本来ならば夜間の行軍は避けるかもしれないが、
あまりのんびりとしていられる状況ではないからな。
セルビナ軍が戦力を整えてしまう前に早々に追撃を仕掛けておくべきだろう。
「王都での戦いがセルビナ王国と共和国の運命を決める決戦となる!もはや後戻りは出来ない!!全員、最後まで気を抜くことなく全力を尽くしてほしい!!」
「「「「「おおおおおおおっ!!!!」」」」」
俺の期待に応えてくれる海兵達に夜間の行軍に関する不満など感じられない。
もやは誰もが分かっているのだろう。
今更、後戻りする方法など存在していないのだからな。
…すでに退路は断ったあとだ。
俺達が乗り込んでいた16隻の艦隊は、
敵対するセルビナ軍に奪われることがないように非戦闘員である乗組員達に指示を出して共和国に向けて出港させている。
そのため。
すでに港に共和国の船は一隻も存在していないのだ。
ここには戦闘員である1万4千の戦力だけを町に残して、
セルビナ王国南部の港町オルトナにおいて孤立させている。
本来ならば危険な行為ではあるが、
現在は野々村斉蔵と飯塚駿一の協力によってセルビナ海軍に襲われる心配はないからな。
背後から奇襲を受ける可能性はないはずだ。
もちろんまだ陰陽師軍が存在していることを考えれば決して満足出来る戦力ではないのだが、
陰陽師軍は王都で待機しているらしい。
ひとまずセルビナの軍隊に襲われる心配はないだろう。
…とは言え。
後戻りが出来ない状況なのは間違いない。
船がない以上、前に進むしか道はないのだ。
「全軍前進っ!セルビナ王都へ突き進めっ!!」
「「「「「おおおおおーーーーっ!!!!!」」」」」
気合いの叫び声を発しながら町を出発する共和国軍。
すでに目覚めた研究所の職員達や御堂君達を含めて王都に向かって軍を進めることにした。
…残る問題は西園寺君達だな。
西園寺君と藤沢君。
そして特風の4人の生徒が目覚めれば、
ひとまずこちらの準備は万端と言えるだろう。
今もまだ魔力を失ったまま眠りについている6人は海軍の協力によって担架で運ばれている。
…少なくとも西園寺君には早々に目覚めてもらわなければ王都の決戦に間に合わなくなるがな。
王都での戦闘において部隊の指揮を任せる為には西園寺君に目覚めてもらう必要があるのだ。
…間に合うと信じるしかないか。
西園寺君の復帰を願いつつ。
ひとまず今は王都に向かって歩みを進めることにした。




