退屈
《サイド:長野紗耶香》
…う~ん。
これはこれで退屈よね~。
9万のミッドガルム軍に対峙する反乱軍と共和国軍だけど。
それぞれが部隊を展開してから、
すでに丸一日が過ぎ去ろうとしているからよ。
「昨日のお昼に足止めを開始してからすでに丸一日。ここまで動きに変化がないと、逆に不安になってくるわね。」
全く動き出す気配が感じられないミッドガルム軍を見つめながら不安を言葉にしてみたの。
…この状況はまるで足止めを望んでいるかのように思えるわ。
いえ、正確に言うならミッドガルム側が私達を足止めしてるかような、そんな感じがするの。
数を揃えているにもかかわらず、
力付くで戦う方法を選ばないのは不自然よ。
牽制のみを繰り返して大人しく様子を窺う行動は共和国の戦力をこの場に足止めしているかのようにも思えるわ。
「何か目的があるのかしら?」
「さあ?どうだろうね。」
疑問を感じる私に慶太が答えてくれる。
「僕にも理由は分からないけれど、もしも僕達を足止めすることに意味があるのだとしたら、ミッドガルムは何かを隠しているということだろうね。」
…私達に知られてはいけない何か?
そんなものがあるのかしら?
事実がどうかは知らないけれど。
その何かを隠す為に軍を展開して共和国軍を足止めしている可能性もあるということよ。
「調べてみる必要があるかもね。」
「私が行っても良いわよ。」
「いや、紗耶香はダメだ。もしも戦闘になった場合に僕達が戦わなければ多くの犠牲が出ることになるからね。それに広範囲に部隊を展開しているミッドガルム軍を突破するのも難しいと思う。だから今は罠があると分かっていても、ここで待機するしかないんだ。」
…まあ、ね。
言いたいことは理解できるわ。
せめて共和国軍がセルビナ王国を制圧するまでは下手にミッドガルム軍と争うのは避けるべきだと考えているから。
「セルビナが滅ぶまでは待機だ。それまでは犠牲さえでなければそれで良い。」
「分かったわ。」
まあ、そもそも私達としては無理に戦う理由がないから、
今のままでいるほうがこちらとしても都合が良いしね。
「それにミッドガルム国内にはすでに共和国軍の密偵が数多く潜入しているんだ。僕達が無理にここを突破しなくても情報は手に入るはずだよ。」
…ああ、そう言えばそうだったわね。
近藤悠輝がミッドガルム東部の偵察を行っていたように、
ヴァルセムの生徒達や陸軍の部隊がミッドガルム国内において諜報活動を行っているはずなのよ。
その情報が届くことを信じて、
慶太は待機を選択しているみたい。
「今は待ち続けよう。それが最善の選択肢だ。」
「ええ、そうね。」
無理に戦おうとはせずに、
私達は会話を終えたの。




