光の屈折
《サイド:文塚乃絵瑠》
…ん?
あれっ?
…今、ちょっとだけ変な感じがしたわよね?
見逃してしまいそうなほどの小さな変化だったけれど。
数百回、数千回と失敗してきたからこそ何かが違うように思えたのよ。
…もしかして?
長時間の訓練のおかげで、
ついに何かを掴みかけようとしてるのかもしれないわ。
「…影が動いたかも?」
気のせいかなとも思ってしまったけれど。
どうやらそうじゃないみたい。
様子を見てくれていた美咲さんが笑顔で話し掛けてくれたのよ。
「うふふ♪気のせいじゃないわよ。微妙な変化だったけれど、確かに影が動いていたわ♪」
…やっぱりそうなんだ?
ちょっとした揺らめき程度のささやかな動きだったけれど。
それでも最初の課題に対する第一歩が踏み出せたような気がしたのよ。
…ホントに影が揺れたのよね?
確認の為に光の魔術を展開してみる。
その直後に光の当たらない場所に生まれた影が僅かに揺らめいているのが見えたわ。
「影が…動いてる?」
まだまだ思い通りにとはいかないけれど。
確かな変化がそこにはあるの。
「もしかして…上手くいくっぽい?」
自分でもよくわからないけれど。
それでも美咲さんは満足してくれていたわ。
「ええ、そうね。今の変化だけで見れば、『陽炎』とか『蜃気楼』が当てはまるかもしれないわね。」
…ああ、なるほど。
光の屈折によって起こる現象ってやつよ。
そこから影の力に干渉しようとしてるみたい。
「考えられる可能性の一つとして、光の屈折を応用すれば影を操ることが出来るかもしれないわ。」
…なるほどなるほど〜。
そういうことなのね。
ようやく進むべき方向性が見えてきたことで
何をどうすればいいのかが分かってきたような気がしたのよ。
「…ということは、今の感じを続ければいいんですよね?」
「そうなるわね。光の屈折から可能性を広げていくことが乃絵瑠ちゃんの成長に繋がると思うわ♪」
…ん~。
光の屈折ね~。
影を操るって考えるよりも光を操るって考えたほうが、
私としては理解しやすい理論だったわ。
…とりあえずは上手くいくことを信じて色々と試してみるしかないわね。
自分自身に言い聞かせながら修業を続行してみる。
今よりも強くなる為に。
彩花に追いつく為に。
…そして。
美咲さんから卒業する為に。
魔術の訓練を再開したのよ。




