疑ってばかりいては
《サイド:黒柳大悟》
…ひとまず問題は解決だろうか?
「栗原さん!!」
野々村が去ったことで静寂を取り戻した室内に御堂君が駆け付けたようだ。
おそらく合流した和泉君から栗原君が瀕死の重傷だと聞いていたのだろう。
慌てて駆け付けてくれた様子の御堂君だったが治療は終わっているからな。
すでに心配する必要はない。
「あっ…御堂君…。」
駆けつけてくれた御堂君に気付いて、
栗原君は気まずそうに視線を落としている。
「………。」
何を言うべきか悩んでいるのだろう。
その間にも御堂君は栗原君を心配して近づいていく。
「大丈夫なのかい?」
見た限りでは得に問題はないはずだが、
駆けつけたばかりの御堂君では状況が理解できないのだろう。
不安に思う気持ちは当然だ。
「動けないのなら手を貸すよ。」
「あ、あははは…っ。も、もう大丈夫よ。治療してもらったから大丈夫。ごめんね、心配かけて…」
「…あ、ああ、そうか。それなら良いんだ。無事なら良かったよ。」
渇いた笑い声で答える栗原君だったが、
それでも無事が確認できたことで御堂君はほっと安堵の息を吐いている。
…とは言え。
安心して気を抜くのはまだ早い。
「安心するのはまだ早いな。海軍は抑えたが、陰陽師軍がまだ残っているはずだ。」
「…あ!そのことなんですが、僕が聞いた話だと陰陽師軍はすでにこの町を離れて王都の防衛に向かったそうです。」
…ほう。
この町に陰陽師軍はいないのか。
港に突入して砦の内部まで進軍したのに関わらず、
これまで一度も陰陽師軍と遭遇しなかったことからいないのかもしれないという可能性も考えてはいたのだが、
どうやら事実としてこの町にいないらしい。
…ならば話は早いな。
すでに海軍は停戦を認めているのだ。
そしてこの町に陰陽師軍がいないのならば次の行動は一つしかない。
本来なら各港を占拠してから王都に進軍する予定だったのだが、
野々村斉蔵が率いる海軍が停戦を受け入れてくれたことですでにその必要はなくなっている。
もちろん停戦は口約束であって絶対の保証はどこにもないのだが、
それでも今は野々村斉蔵を信じてみるべきだろう。
…疑ってばかりいては和平など有り得ないからな。
多少、危険でもセルビナ海軍が静観すると信じるほうがいい。
現時点での各国の動きが不明であり、
共和国の危機が差し迫る中で余計な時間を費やす暇もない。
…戦闘が回避できるのなら、先に進んだほうが賢明だ。
港の制圧は放棄してセルビナ海軍を見逃すことが和平の道に繋がると信じて次の方針を決定することにした。
「それでは部隊をまとめてセルビナ王都に進軍しよう!そこで一気にケリを付けるぞ!!」
少なからず背後の不安は残るが、
今は野々村斉蔵と飯塚駿一を信じて決断するべきだ。
「多国籍軍と合流して王都に攻め込むぞ!」
もちろん多国籍軍の状況も不明なのだが、
十分な戦力が残存していると信じて動き出すしかない。
「一旦、船に戻るぞ!」
旗艦に戻って艦隊を再集結させる。
そして全ての海軍を率いて王都に進軍する。
その為に。
御堂君達を引き連れて船に戻ることにした。




