単独でも一軍に値する
「確かに今回の戦争だけを見ればそうかもしれん。…だがな。それが全てではないのだ。」
…どういうことかしら?
よく分からないけれど。
セルビナ王国が共和国に対して攻めてきたことには一応理由があるみたい。
…こういうのを大義名分っていうのかしら?
「お前達の力は確実に世界に影響を及ぼすだろう。一国をたやすく滅ぼし、世界を手に入れることさえも出来てしまう力を見過ごすわけにはいかんのだ。」
…それって。
アストリア王国と同じで、
この世界から魔術師という存在を取り除くという目的があるようね。
実際にセルビナ王国が総力を結集して戦争を挑んでも共和国を潰すことは出来なかったわ。
圧倒的とも言える数を揃えて戦いを挑んでも全くと言っていいほど共和国に対して歯が立たなかったのよ。
「我等は共和国に集まる魔術師達が恐ろしいのだ。その中においても特に『お前達のような単独でも一軍に値する』バケモノの存在が何よりも恐ろしい。」
…ああ、うん。
まあ、ね。
…言いたいことは理解出来なくもないわ。
一撃で海軍艦隊を吹き飛ばせる力を持つ御堂先輩。
あるいは御堂先輩に匹敵する能力を持つ常盤成美さん。
もしくはそんな二人に次ぐかもしれない私。
和泉さんや黒柳所長も軍隊を相手にして立ち向かえる力の持ち主かもしれないし、
私達がその気になれば町の一つや二つ程度はホンの数時間で制圧できてしまうのかもしれない。
だからこそ。
考え方によっては神にも等しいと言えてしまう力に恐れを感じているんでしょうね。
「分かるか?お前達は存在そのものが恐怖の象徴なのだ。セルビナ王国を滅ぼせる力を持って、お前達は何を目指す?その力で何を成し遂げる?世界の平和を望むのか?それとも世界の支配を望むのか?そのどちらにしても、魔術師が世界を手に入れることに変わりはないのだがな。」
魔術師が世界を手に入れる?
…そうなのかしら?
世界を平和に導くことも。
世界を力で支配することも。
そのどちらであっても魔術師による制圧に変わりはないと言われてしまったのよ。
魔術という絶対的な力が存在する限り、
平等の立場はありえないということ。
強い人が弱い人を支配するという構図が成立してしまうせいで、
魔術師と非魔術師の対立が消えることはないのかもしれないわ。
「お前達がどれほど平和を願おうとも、それがすでに傲慢なのだ。」
力によって求める世界に真の平等は有り得ないということよ。
「お前達の望む平和など、ただの『偽善』に過ぎんっ!!」
魔術を使えないからこそ、
野々村さんは対立の原因を突いてきたの。
…ふう。
偽善、ね。
栗原さんの願う想いは偽りの平和でしかなくて、
魔術師による支配でしかないということよ。
そんなふうに考える野々村さんの言葉を否定することは出来なかったわ。




