天使の杖
《サイド:栗原薫》
…あ~。
そう言えば?
海軍の軍船が停泊している場所から少し離れた砂浜で波の音を聞きながら朝食を続けていたんだけどね。
静かな一時を過ごしている途中で、
ふとあることを思い出して御堂君に話し掛けることにしたの。
「ねえねえ、御堂君に話したいことがあるんだけど。い。」
昨日はあまり時間が取れなくて話し合う機会がなかったのよ。
だけど今ならゆっくり話が出来るわよね?
とりあえず昨日の海戦での出来事を話しておこうと思ったの。
「昨日のことで聞いてほしい話が幾つかあるんだけど、聞いてもらっても良い?」
「ああ、良いよ。」
「うん。ありがと。」
すんなりと聞いてもらえることになったから、
気になっていることを全て聞いてもらうことにしたの。
「えっと…昨日のセルビナ軍との戦いで私も成美もルーンを使えるようになったんだけどね。」
私は『ニルヴァーナ』で、
成美は『マテリアル』
それぞれにルーンを使えるようになったのよ。
だけどその過程に関して疑問を感じているの。
「とりあえず見せるわね。」
説明の前に実物を用意してみる。
私の手が輝きを放って一本の杖が姿を現したわ。
神々しささえ感じさせるほどの輝きを放って、
見る者全てに神の威光を連想させる幻想的な光の杖なんだけど。
長さは私の身長よりも少し短めの150センチくらいかな?
先端には太陽を小さくしたようなまばゆい球体があって、
慈愛を象徴するかのような暖かな光を放つ杖には命を包み込むような翼の刻印が紋様として描かれてる。
「まるで天使が持っていそうな杖ですね。」
一言で感想を言ってくれた鈴置さんの表現は確かにその通りで、
御堂君も成美も素直に認めてくれていたわ。
「綺麗な杖だね」
「薫にぴったりだよ〜♪」
…あ、あはははっ。
褒められると照れるわね。
苦笑いを浮かべてしまった私の隣では
成美もルーンを生み出そうとしていたわ。
光り輝く成美の両手の中に、
御堂君にとって大切の人のルーンが現れたのよ。
「…マテリアルか。」
…ええ、そう。
成美の手に現れたのは大きな五防の星を冠する杖。
緑と青の輝きを放つ沙織の杖を見間違えるはずもないわよね。
「そうか…。やっぱり成美ちゃんはルーンも受け継いでいたんだね。」
その事実を知った御堂君が成美に問い掛けていたの。
「沙織のルーンを使えるとなると、やっぱり翔子のルーンも使えるのかい?」
「あ、はい。」
小さく頷いてから成美が実証して見せたわ。
再び光り始める成美の手のマテリアルが消失すると同時に、
虹色の弓が現れたのよ。
「…アドラスティアだ。」
美袋さんの最後のルーン。
虹色の弓を見て戸惑う御堂君に、
成美はさらなるルーンを見せていく。
「今度はパルティアか。」
アドラスティアの消失と同時に生まれたルーンはパルティアね。
美袋さんの最初のルーンで、
アドラスティアの原形となった金色の弓よ。
二つ目の弓を生み出した直後に、
成美は最後のルーンを作り上げたわ。
まばゆい光と共に姿を現すルーンは扇。
「グロリアスクイーンまで…。」
驚く御堂君の視線の先には、
私も見覚えのある扇が存在していたの。




