案ずることはない
《サイド:米倉宗一郎》
「セルビナ軍を壊滅させる為に、可能な限りの戦力を送り込むことをお勧めします。」
…援軍か。
劣勢の共和国軍に援軍を送るように薦めてきた竜崎の意見を聞いてから、
改めて楠木司令官に問い掛けてみることにした。
「現時点で、どの程度の軍を動かせる?」
「進藤元帥の判断にもよりますが、国境警備隊の基地に待機させている陸軍の半数は可能かと思われます。」
半数でもおよそ3万だ。
竜の牙との戦闘によって少なからず被害が出たようだが、
それでも3万なら即座に動かせるらしい。
セルビナ軍4万対共和国軍3万の戦場に援軍として3万の陸軍を送り込めるとすれば、
勢力図は大幅に変動するだろう。
「楠木司令官。即座に進藤に連絡を取ってセルビナ方面への援軍の手筈を整えるように指示を伝えてくれ。」
「はい。分かりました。」
俺の指示によって、
楠木司令官は前園副隊長に指示をだしてくれた。
「前園副隊長。進藤元帥と連絡をとって、今の指示を伝えてきてほしい。」
「了解いたしました!」
指示を受けて即座に本陣を離れる前園副隊長が国境南部の警備隊の基地に向かうのを見送ってた楠木司令官が再び俺に振り返る。
「前もって準備だけは進めていましたので、早ければ1時間以内に軍を派遣できると思います。」
…ほう、段取りが良いな。
前園副隊長が連絡を取り。
進藤輝彦が指揮を取り。
陸軍の部隊をセルビナ方面に向かわせるという一連の流れを1時間以内に完遂させることが可能らしい。
「今から急げば夕刻までにはセルビナの国境に到達出来ると思います。」
最速で午後3時過ぎ。
遅くとも午後4時までには国境に辿り着けるようだ。
「うむ。何とかそれまでは現在の戦力で耐え凌いでもらうしかないだろう。」
戦闘が再開してからほぼ丸一日が経過した現状での詳しい情報が分からないままだが、
セルビナ軍と共和国軍は今も戦闘を続けているはずだ。
はたして共和国軍は今もまだ残存しているのか?
それとも壊滅寸前なのか?
それはこの地にいては分からない。
…だが。
「心配はいるまい。」
北条は安心仕切った表情で想いを言葉にしてくれていた。
「あの地には鞍馬信彦がいるのだ。何も案ずることはない。」
…ああ、鞍馬信彦か。
北条直属の部下である鞍馬信彦は、
総司令官である鞍馬宗久の息子であり国境警備隊の隊長でもある。
その実力を北条は誰よりも信頼している様子だな。
「鞍馬信彦がいる限り心配する必要はない。」
…ふっ。
そうか。
自信を持って断言してくれた北条の意志を感じとって俺も信じることにした。
「鞍馬の血を信じて願うしかないだろう。共和国軍の無事を…そして多くの仲間達の生存を、だ。」
信じて願うことにしてから、
ひとまずセルビナ王国に関する軍議は終了させることにした。




