良し悪し
《サイド:文塚乃絵瑠》
…う~ん。
相変わらずって言うか何て言うか。
…毎回毎回、ご馳走が並ぶけれど。
ここまで頑張らなくても良いと思うのよね~。
今日もギルドの2階にあるいつもの部屋で、
美咲さんと一緒に朝食と向き合ってるんだけど。
美味しさは抜群でも絶対に食べ切れない量なのよ。
テーブル一杯の料理の数々を眺めるだけで、
どうしても考えてしまうわ。
…はっきり言って、無駄にしか思えないわね。
残ることが前提の料理みたいだけど。
毎回料理を残すのは気持ち的に後味が悪いと思うの。
…どうせ残るんだから。
最初からここに持ってこずに、
他の人達に分けておけば良いのに。
そうすれば残り物のことを考えずに済むはずよね?
…それなのに。
美咲さんは笑顔で語りかけてくるのよ。
「これは全部、乃絵瑠ちゃんの為の料理なのよ♪他の人に料理を分けるのはおまけであって、そこを目的にしてるわけじゃないわ♪」
…いやいや。
私の考えを読み取って当然のように答えてくれる美咲さんの行動が、
さらなる疑問を生み出していくのよ。
…だから、何で分かるの?
声には出してないはずなのに。
まるで会話をしてるかのように完璧に答えてくれるのよ。
…絶対に心が読めてるとしか思えないわ。
「ふふっ♪」
わりと本気で不審に思う私に、
美咲さんは微笑み続けてる。
「ん~♪前にも言ったけど、相手の表情を見て予想してるだけよ♪」
…うっわ~。
嘘くさい。
…と言うか。
どう考えても納得できないわ。
…普通、顔を見ただけで分かるものなの?
機嫌とか感情とか、
その程度なら納得できるけれど。
考えそのものを把握出来るものなの?
果てしなく疑問に感じるわね。
「そこはまあ…人生経験かしら?」
私の疑問に対して即座に答える美咲さんはもう何もかもが疑わしいの。
…う~ん?
あ~。
…でも、これって考え方によっては便利なのかな?
言葉にしなくても伝わる想いって微妙に便利よね。
良い意味でも。
悪い意味でも。
それは現実として目の前で実証されているから。
…でも、知られたくないことも気付かれるのかな?
その可能性に気付いた瞬間に、
美咲さんが妖しい微笑みを向けてきたわ。
「まあ、そうね~。何でもかんでもっていうわけにはいかないけれど、分かり過ぎるのもこれはこれで大変なのよ♪相手が女性なら実害はないけれど、男性と会話をする時には少し疲れることもあるわ。私の体を狙ってる人とか、下品な想像をしてる人とか、そういう人達と会話をする時は正直ウンザリすることもあるわね〜♪」
…うっっっっっわ〜〜〜~。
相手の視線と表情から思考と感情が把握出来るせいで、
くだらないことや下心までも把握できてしまうみたい。
そのせいで精神的に疲れることもあるっていうのが美咲さんの意見だったのよ。




