この世界を自由に
《サイド:鈴置美春》
「気持ちの良い天気ですね。」
日の光を浴びて煌めく海。
遥か彼方に見える水平線。
漂う潮の香りがジェノスの町を思い起こさせてくれて懐かしい気持ちを感じさせてくれるけれど。
残念ながらここはジェノスではないわ。
そもそも共和国ですらないのよ。
…一応、セルビナの海域になるのかしら?
もしかすると共和国でもセルビナでもないのかもしれないけれど。
初めて国外に出た私にとって外の世界は広すぎて、
どこがどこかなんてさっぱりわからないわ。
とても広大で。
とても雄大で。
とても新鮮な未知の世界が広がっているからよ。
「今日は穏やかな海ですね。」
昨日までの大荒れの海は今はもう面影すら見えない。
「しばらくこのままだと良いんですけどね〜。」
心地好い雰囲気の中でそっと深呼吸を繰り返してみる。
ここには争いがないと思うだけで、
心が安らぎに満たされていく気がするからよ。
戦争という名の狂った争いが始まってしまった世界だけど。
まるで世界から隔離されたかのような静かな島の中では、
自然と微笑みを浮かべることができたの。
「きっとこの世界には私達の知らない場所が沢山あって、沢山の幸せがあるのかもしれませんね。」
もちろん沢山の悲しみもあるんでしょうけど。
…それでもね。
もしも争いさえなければ。
魔術師を弾圧する争いさえなければ。
…思う存分、世界中を見て回れるはずなのよ。
ジェノスと近隣の町程度しか知らなかったからこそ、
私の心は世界に興味を持ち始めていたの。
…だからいつか。
いつの日にか、
この世界を自由に旅してみたいかな。
…もしかしたら。
この戦争が終われば。
争いのない世界が実現できたなら。
そんな夢も叶うかもしれないのよ。
「ははっ、そうだね。共和国の外にも幸せはあるよ。」
御堂先輩は私の言葉を肯定してくれていたわ。
「僕は全てを失って共和国に逃げ込んだ立場だから、あまり自信を持っては言えないけどね。それでも僕は思うんだ。争いさえなければ、誰もが幸せに暮らせる世界さえ実現できれば、きっとどこにでも自由に行けるんじゃないかな…ってね。」
…そっか。
御堂先輩が言葉にした想いは私と同じだったのよ。
ただただ共和国に閉じこもってるんじゃなくて、
どこまでも自由に行ってみたいって思っていたみたい。
…御堂先輩も同じように考えているのね。
自分と同じ考えを持つ人がいる。
ただそれだけのことが、
何だか嬉しく思えたの。
…きっとみんな同じなのよね。
きっとみんな同じ願いを持っているのよ。
共和国という限られた世界に閉じこもって生きるのではなくて、
広い世界を自由に行動できる日が来ることを、
きっと誰もが望んでいるの。
…それが、みんなの想う幸せな結末なのかな。
自由を手に入れるということ。
それこそがみんなの願いだって信じられるような気がしたのよ。




