そうしていた
ついに対面することになった竜崎。
こうして向き合うのは数年ぶりになるのだが、
現在の竜崎からは組織を率いる指揮官としての貫禄と威厳が感じられる。
…以前とは違うな。
重要な幹部であることに変わりはないのだが、
存在感とでも言うべき雰囲気が以前とは変わっているのだ。
「かつてよりも成長した様子だな。あの頃はまだ幼さがあったが、今では立派な指揮官の顔だ。」
「ええ、まあ、色々とありましたので…」
…色々、か。
多くは語らずに、
一言に思いを込める竜崎の苦労は一目で察することができた。
「まずはきみ達の話を聞かせてもらおうか。これからどうするのか?そしてこれから何が起こるのか?その全てを聞かせてもらおう。」
「…それはまるで僕達がこの先の出来事を知っているかのような質問ですね。」
これから何が起こるのか?という俺の発言に違和感を感じた様子だが、
俺としてはほぼ確信しているつもりだ。
「全てとは言わないが、おおよその流れは理解しているはずだ。」
「何故、そう思うのですか?」
「そうでなければこの状況は有り得ないからな。」
「………。」
北条や他の者達はまだ気付いていない様子だが、
俺はすでに気付いている。
「…あまり俺を見くびるなよ?」
俺の目はそうそう簡単にごまかせはしない。
「きみ達は何らかの意図によって共和国に来たはずだ。」
だがそれは共闘などという安易な理由ではない。
もしもそれだけのことであれば、
すでに『そうしていた』はず。
「今まで消息を断っていたきみ達が今になって突然姿を現した。そこには何らかの意味があるはずだ。そうだろう?竜崎慶太。」
「………。」
迷いのない瞳で見つめる俺の推測を聞いた竜崎は、
素直に俺の言葉を認めていた。
「確かに…僕達の目的は共闘だけではありません。他にも考えていることはあります。そしてそこに願いを賭けているのも事実です。あくまでも偶然手に入れた希望ではありますが、その希望によって僕達は動き出す覚悟を決めました。」
「手に入れた希望とは何だ?」
「それは言えません。今はまだ誰にも知られるわけにはいかないからです。もしも今その事実が漏れてしまえば希望が失われてしまう可能性があります。だからこそ、その可能性を防ぐ為には最後まで事実を秘匿する必要があると考えています。」
「隠し事をしたままで交渉が出来ると考えているのか?」
それでは竜崎達にとって都合がよすぎるだろう。
交渉とは互いの立場が平等でなければ成り立たないからな。
切り札を隠したままの相手とまともに話し合うなど出来るはずがない。
「情報を伏せる相手を信じることは出来ない。そして信用できない相手と交渉など不可能だ。」
「出来なければそれまでのことだと考えています。今の僕達にとっては共和国との共闘よりも希望を守り抜くほうが遥かに重要だからです。」
…ほう。
脅しは通用しないか。
竜崎達が何を秘匿しているのかは知らないが、
共和国との共闘を放棄しても構わないと考えているのは事実のようだ。
「それだけ価値がある『モノ』をきみ達は隠し持っているということか?」
「今はそうですね。結果的にどうなるかはまだ分かりませんが、僕達にとって望むべき方向へ進むことを願っています。」
…願う、か。
それはつまり、
竜崎達はまだ希望を手に入れていないということだ。
…いや。
手には入れたが、
扱いきれていないと考えるべきかもしれないな。
「それは人か?物か?」
「人物です。」
聞いても無駄かと思っていたが、
意外とすんなりと答えてくれていた。




