弟の監視
「…着きました。」
「………。」
馬車を止めた俺にちらりと視線を向けた米倉宗一郎は静かに馬車を降り立った。
「あれが反乱軍か?」
「はい、そうです。」
返事をしてから俺も馬車を下りようとしたところで真っ先に姉貴が歩み寄ってくる。
「ご苦労様、淳弥。ようやく合流出来たわね。」
…まあ、確かに、ようやくだな。
気楽に微笑む姉貴に苦笑いを返しておく。
「完璧に姉貴の都合の良いように動かされてる気がするけどな。」
「それはそうよ。そうなるようにこっちも苦労してるんだから。淳弥もちょっとは協力しなさいよね?」
…いやいや。
まるで俺が一切何もしていないかのような言いようだよな?
思わず大きなため息を吐いてしまう。
「…あのな。これでも身を削る思いで協力してるはずなんだが、まだ足りないのか?」
「はあ?全然。全く。どうしようもないくらい足りない決まってるじゃない!」
…はぁ?
何故だ?
これ以上、俺にどうしろと?
強気な態度を崩さない姉貴との会話に疲れを感じ始めてきたんだが。
それでも姉貴ははっきりと断言してくる。
「可愛い女の子を集めて、お気楽に幸せな日々を過ごしていた淳弥には、まだまだ苦労をしてもらわないと全然割に合わないわ。」
…はあ?
今の発言には疑問しか感じられなかった。
「どういう意味だ?」
お気楽に遊んでいた覚えもなければ、
女子といちゃついた覚えもないぞ?
それなのに姉貴は笑顔で告げてくる。
「何度も何度も美袋翔子に告白して、その度にフラれてる所をバッチリ確認してるわよっ♪」
…んなっ!?
あからさまに俺を見下した視線で笑顔を浮かべる姉貴は蔑んだ瞳で俺に微笑みを向けていた。
「密偵の役目を担っていながら女の子を追いかけ回して堂々と米倉宗一郎の前に姿を見せるなんて、ホントに良い度胸をしてるわね~。あ・つ・や・っ♪」
…うああああああああああぁぁっ!!!
隠していたはずの事実には気付れてる!?
その事実に気付いた俺に
姉貴は笑顔で宣告してくる。
「千里の瞳でちゃんと見ていたのよ?可愛い可愛いたった一人の愛しの大切な弟がジェノスの町で一人ぼっちで淋しい思いをしてるんじゃないかな~?って思ってね。時間がある時は淳弥を監視して覗いていたのよ♪」
…いやいやいやいやっ。
前半の発言と後半の行動が矛盾してるだろっ!?
大切な弟の私生活をこっそり覗き見る姉がいるのか?
「私が知らないと思っていたら、大きな間違いよ♪」
…うぁ。
姉貴の宣言に恐怖を感じた瞬間だった。
全て気付かれていたことを今になって知ってしまったからだ。
…あとで殺されかねないな。
姉貴の発言は事実であり、
実際に何を言われても仕方がない行動をとっていたからだ。
…とは言え。
俺の行動を監視していた姉貴の行動にも落ち込む一方だった。
…ちぃっ!
まさかそんなくだらないことに秘宝を使うとはな。
完全に想定外の出来事だった。
さすがの姉貴でも、
そこまで馬鹿なことはしないと思っていたからだ。
「…ああ、そうそう。もちろん私一人だけじゃなくて雪も一緒に見てたわよ♪だから当然、あの子も全部知ってるわよっ♪淳弥があっさりばっさりフラれるところとか、試合でズタボロに敗北するところとかもね~♪」
…はぁぁぁっ!?
即座に雪に視線を向けた俺の視線の先で、
雪は苦笑いを浮かべている。
…おいおいおいおい。
マジか?
「そ・れ・に・ね~。」
言葉を無くして呆然とする俺に対して、
まだまだ追い撃ちをかけようとする姉貴だったが。
「…まあまあ。」
さすがに言い過ぎだと思ってくれたのか、
慶太が引き止めてくれていた。




