偽りの情報
「漁村フルームによって行われた魔術師狩り。それは竜の牙が流した偽りの噂によって起こされました。」
「な…んだとっ!?」
今まで考えてもいなかった真実だが、
否定できない出来事でもあった。
何故ならフルームに魔術師がいないことは俺も確認していたからだ。
一般人や陰陽師には分からずとも、
魔術師同士であれば魔力の有無が感じられるからな。
もしもあの村に魔術師がいれば俺が気付かないはずがない。
だからこそあの村には魔術師がいなかったと断言できる。
唯一、天城総魔だけが魔術師としての素質を持っていたようだが、
当時は微弱な波動でしかなく、
まだまだまともに魔術が使えるような段階ではなかったはず。
…それなのに。
アストリア軍はフルームに襲い掛かってきた。
…フルームには魔術師がいないのに、だ。
「魔術師狩りの理由は俺も疑問を感じていたのだ。何故、あの村を襲う必要があったのか?とな…。」
だがそれはずっと分からずにいた。
「だが…だがっ!!」
長野君がもたらした情報によって、
俺はついに真実を知ってしまったのだ。
「天城総司は…竜の牙に殺されたのかっ!」
「実際に手を下したのはアストリアの陰陽師軍のようですが、争いのきっかけを作ったのは竜の牙で間違いありません。」
誰が手を下したかなど問題ではない。
ここで重要なのは竜の牙が流した偽りの噂によって動いたアストリア軍によって漁村フルームは滅びたという事実だ。
秘宝を求める竜の牙によって、
天城総司は死に追いやられていたらしい。
それが真実であり、
それが全ての真相だった。
「あの時からっ!!あの時からすでに竜の牙との戦いは始まっていたのか!!」
悔しさを感じて拳を握り締めてしまう。
そして『ドンッ!!!』と、床を殴りつけて怒りを表わにする俺に、
長野君は説明を続けてくれた。
「アストリア軍の攻撃によって滅びたフルームの跡地を竜の牙の部隊が念入りに探索を行ったらしいです。秘宝を求めて天城総司に関わる全てを調査したそうですが、肝心の秘宝はどこにもなかったそうです。村のどこを探しても秘宝はなく、その結果として秘宝は誰かの手によって持ち出されたと判断されました。そうして次に目を付けたのが…。」
「…俺か。」
「そのようです。」
必死に苛立ちを抑えながら事実を確認してみたことで長野君は頷いていた。
「天城総司に最後に接触した人物として米倉さんに調査の目が向きました。ですが当時はまだ無名だったあなたの捜索は難航して、ただただ時間だけが過ぎていき、何も出来ないまま数年の月日が流れたそうです。」
「ああ、そのあとのことは知っている。竜の牙の密偵が国内に潜入し始めたことを察した俺は即座に根回しに動き出したからな。竜の牙を共和国から追い出す為に代表として名乗りをあげたのだ。」
「ええ、それ以降。竜の牙は一旦身を引きました。ですが、あなたが引退したことをきっかけとして再び動き出したのです。それが現在の状況になります。」
何故、竜の牙がこれほどまで執拗に俺を追い回すのか?
そして秘宝に関する情報をどこから入手したのか?
それらの理由がようやく明らかになった瞬間だった。




