宗一郎にとっては
《サイド:米倉宗一郎》
長野君は説明の前に前置きをしてから、
自らの立場を明確にしようとしていた。
「…全てを話す前に、これだけは言っておきますが、俺に与えられた役目は米倉元代表の護衛になります。」
「俺の護衛だと?」
「はい、そうです。決して敵対する為にいるわけではありませんし、もちろん秘宝を求めているわけでもありません。」
…違うのか?
「あるかないか分からない秘宝を手に入れることが目的ではなく、あくまでも竜の牙の手に秘宝が渡らないように妨害することが目的です。そのために米倉元代表の身を守るというのが俺の任務になりました。」
…ほう、なるほどな。
秘宝を手に入れる為ではなく、
秘宝を渡さない為にいるということか。
「確かに以前は…いえ、ジェノスに来た当初は竜の牙の一員として秘宝を探索していたのも事実です。ですが今は違います。現在は秘宝の探索ではなく、米倉元代表の護衛ならびに秘宝の護衛が俺の任務です。」
竜の牙ではなく、
反乱軍として俺を護衛する為に行動していると説明してくれたのだ。
「共和国にとって反乱軍が味方かどうかはともかく…少なくとも米倉元代表にとって反乱軍は味方で間違いありません。共通の敵と対立しあう関係上、俺達はあなたの味方ということになります。」
…なるほどな。
共和国ではなく、俺の味方か。
…そう言われてみれば妙に納得できてしまう。
あくまでも秘宝が存在しているという前提での関係だが、
秘宝を求める竜の牙が俺から秘宝を奪い取って力を肥大化させることを防ぐ為に、
反乱軍は長野君を俺の側に送り込んでいたらしい。
「元々は竜の牙の一員として秘宝を奪い取るつもりでジェノスに入ってあなたに接近しました。ですが今は違います。米倉元代表を護衛して秘宝が竜の牙に奪われるのを防ぐ為に俺はいます。」
はっきりと味方であることを告げてから、
敵対の意志がないことを示してくれたのだ。
長野君の説明を聞いたことで、
無意識の内にほっと安堵の息を吐いていた。
…やはり、敵ではないようだな。
これまでの説明を全て信じて良いかどうかはまだ分からないものの。
長野君の行動と現在の発言を照らし合わせれば、
信用する価値はあると判断してもいいだろう。
…だとすれば、だ。
味方ならば話は早い。
長野君から必要な情報を聞き出して、
今後の交渉の準備を進めれば良いのだ。
そのために幾つかの疑問を順番に解決していくことにしよう。




