誘導尋問
《サイド:長野淳弥》
「きみは長野一族の血を引く者だな?」
…!?
突然、事実を指摘されたことで言葉を詰まらせてしまった。
…何故、気付いた?
長野の名前は有名ではあるが、
一般的な名前でもあるんだぞ?
何の確証もなしに関連付けることは出来ないはずだ。
それなのに。
米倉宗一郎はすでに俺の正体に勘付いている様子だった。
「そしてきみは『元』竜の牙であり。現在においては反乱軍に所属しているのだろう?長野淳弥君。」
…ちっ。
どこまで気付いてるんだ?
竜の牙に関してはともかく、
反乱軍の存在を知っている理由が分からない。
「何故、そう思うのですか?」
「ふっ。何故…か。つまり否定はしないと言うことだな?」
…くっ!
俺としたことが、
こんな簡単な罠に嵌るとはな。
「否定も何も…?」
「俺の言葉の意味を理解していると解釈して良いのだな?」
…くそっ。
ごまかすのは無理か。
「きみの目的は何だ?」
………。
言葉をなくして黙り込んでしまったのだが、
それでも米倉宗一郎は追求を続けてくる。
「俺が持っていると考えている『モノ』を奪い取ることか?」
………。
秘宝を奪い取る為にいるのかどうか?
その問いかけに対する答えは一つしかないが、
今ここで言えることじゃないからな。
黙秘を続ける以外に出来ることはなかった。
「きみは味方か?それとも敵か?」
………。
必死に沈黙を続けてみるが、
異様な雰囲気を目の当たりにしたことで、
里沙達も固唾を飲んで成り行きを見守っている様子だ。
「きみの目的は何だ?」
最も根本的な疑問。
この問い掛けに対する返答次第では、
これ以上の話し合いは無意味になるだろう。
…どうする?
米倉宗一郎の疑問に答えるか?
全てを話すのは簡単だ。
…だが今はまだ、その時じゃないはずだ。
「俺には何のことか分かりません。」
「今更だな。…とは言え、きみにはきみの事情があるのだろう。だからまずはこちらから情報を与えようか。」
…情報だと?
「俺達が追っていた竜の牙はすでに全滅したらしい。そして殲滅を行ったのが反乱軍を名乗る部隊だそうだ。」
…なっ!?
「まさか、この先に反乱軍がいるのですかっ!?」
反乱軍の情報を聞いたことで、
ついに黙秘を放棄してしまった。
その瞬間に米倉宗一郎は笑みを浮かべていたんだ。
「ようやく話す気になったようだな。長野淳弥君。」
…ちっ!
はめられたかっ!
米倉宗一郎の笑みを見たことで、
自分の晒した失態に悔しさを感じてしまった。
まんまと誘導されて自ら全てを認めてしまったからだ。
…くそっ!
騙されて余計なことを言ってしまったと考えたのだが、
どうやら情報そのものは嘘ではなかったらしい。
「落ち込む必要はない。今、言ったことは真実だからな。この先の国境において反乱軍が俺の到着を待っているそうだ。すでに彼等と接触した新堂からはそう聞いている。共和国軍との共闘を目的として交渉を望んでいる…とな。」
…そうか。
包み隠さずに堂々と情報を提供する米倉宗一郎の説明を聞いて、
少しだけだが落ち着きを取り戻すことができた。
…交渉か。
ついにその時が来たのか。
…だったらもう、隠す必要はないな。
馬車を走らせる山道を見つめながら、
米倉宗一郎の質問に答えることにした。
「この先に…姉貴がいるんですね。」
米倉宗一郎の推測を認めるために、
俺が知る情報を話すことにしたんだ。




