組織がある以上
「どこもかしこも問題だらけの様相だな。」
「すみません…。」
北条さんの指摘に僕は何も言えなかった。
竜の牙の内部争い。
身内の恥をさらしていることを謝罪することしかできなかったんだ。
だけど北条辰雄は特に気にした様子もなさそうに楽しそうに笑っていた。
「はっはっは!!まあ、どこでも同じようなものだ。組織がある以上、少なからず揉め事は発生するものだからな。いちいち恥じる必要はない。」
竜の牙に包囲されている状況にあっても明るく笑い飛ばせる北条さんの男らしい態度は頼もしく思える。
「ありがとうございます。」
「はっはっは!気にするな。」
北条さんのおかげで少し落ち着くことが出来たような気がする。
今なら冷静に話し合えるかもしれない。
「教えてくれ、直貴。一体、竜の牙の内部はどうなっているんだ?」
感情を抑えて問い掛けてみたんだけど。
それでも直貴は首を左右に振るだけだった。
「きみ達が知る必要のないことだ。きみ達は戦いを放棄して幸せに暮らせばいい。ただそれだけで良いんだ。」
僕と紗耶香の幸せだけを願ってから、
直貴は紗耶香に視線を向けていた。
「紗耶香。きみはもう罪を重ねるべきではない。ウィッチクイーンの称号を捨てて静かに暮らせ。きみ達にはそれだけの権利がある。そしてそれだけの意味もある。」
「直貴…。あなたも真実を知っているの?」
「ああ、知っている。元成様は父と俺達兄弟にだけは真実を教えてくれたからな。だからこそ長野家は元成様に最期までついて行くと決めたのだ。ゆえに俺達は何があろうともお前達を傷付けることはしない。例え殺されようともな。」
何があっても手出しはしない覚悟を言葉にしてから、
直貴は再び僕に振り返った。
「生きろ慶太。お前にはそれだけの権利がある。竜の牙のことは忘れて紗耶香と共に幸せに暮らせ。」
一方的に願いを告げたあとで、
今度は僕に背中を向けたんだ。
「俺を殺したければ好きにすれば良い。俺は何も話さないし、お前達に真実を告げるつもりもない。俺をどうするかはお前達が勝手に決めろ。」
………。
戦いを放棄してその身を差し出す直貴の背中を見つめながら、
もう一度考えてみることにした。
…今ここで直貴を殺しても何もならない。
戦う意志のない直貴を殺しても何の意味もないんだ。
情報は欲しいけれど、
直貴は何も話さないように思う。
そして僕達の幸せを願ってくれている直貴を殺すことも出来ない。
…僕には何も出来ない。
かつては友と呼んでいた相手だからこそ、
僕には殺すことが出来なかった。
…どうすればいい?
疑問を感じている間にも各地で戦闘は続行している。
数では圧倒的に劣勢な竜の牙が、
共和国軍と反乱軍の部隊に挟み込まれて壊滅の危機に直面しているんだ。
それらを眺めながら悩み続ける。
…僕はどうすればいいんだっ!?
竜の牙に所属する直貴は間違いなく敵だけど。
争う意志のない直貴を斬ることは出来ない。
そんな僕の心の葛藤を察してくれた紗耶香が直貴に話し掛けてくれた。




