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THE WORLD  作者: SEASONS
4月22日
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1851/2004

直系として

「どうやら複雑な事情がありそうだな。」


「…え、ええ。そうみたいね。」



短いやり取りだったけれど。


会話の最中に北条辰雄と共に合流した雪が加わってきたのよ。



「ねえ、お姉ちゃん。どうするの?」



…どうって聞かれても、ね。



戦う意志のない直也をどうすればいいの?



殺すの?


それとも見逃すの?



隠された真実にたどり着く為には直也の協力が必要だけど。


おそらく直也は何も答えないでしょうね。



口を固く閉ざして会話を拒絶しているから。



そして自らの意志を貫く覚悟を直也は行動で示しているわ。



…力付くで聞き出すのは難しいでしょうね。



直也はきっと何も答えないはず。



話すくらいなら死を選ぶだけの覚悟を示しているの。



…ここで直也を殺せば真実への道が遠退いてしまうでしょうね。



だけどここで直也を見逃せば道はまだ続くはず。



今すぐに答えはでなくても、

いずれ答えを知る日が来るかもしれないのよ。



…色々と納得できないことが沢山あるけれど。



今は何を言っても無駄だと判断することにしたわ。



「ここは一旦退くわよ雪。今はまだ直也を殺すわけにはいかないわ。」


「うんっ!!私もそのほうが良いと思うよ♪」


「まあ、妥当な判断だな。」



私の判断を受け入れてくれた雪に続いて、

北条辰雄も同意してくれたのよ。



「しばらく泳がせて様子を見るのも重要な選択肢の一つだろう。」



…ええ、そうね。



「もう少し落ち着ける状況で改めて問いかけてみるわ。」


「ああ、それでいい。」



私の判断に納得してれた北条辰雄は、

即座に周囲に視線を向けたわ。



「…とは言え、この包囲網を抜けるのは少々骨が折れる作業になりそうだな。」



…まあ、ね。



竜の牙の部隊の中央に突撃してきたことで、

私達の周囲は竜の牙が取り囲んでいる状況だからよ。



「逃げ切れそうか?」



疑問を言葉にする北条辰雄だけど。


私が答える前に、

今まで様子を見ていた直也が再び口を開いたの。



「きみ達が逃げるのなら手出しはしないよ。北条辰雄はともかく、紗耶香と雪の生存は僕達の願いでもあるからね。これは長野家と竜谷家の意地を賭けた最後の願いなんだよ。」



…長野家と竜谷家の意地?



意味が分からなくて再び疑問を募らせてしまうけれど。



「………。」



直也は再び口を閉ざしてしまったのよ。



…どういうことなの?



真意は不明だけど。


私の生存を願って静かに道を開いてくれるみたい。



直也が無言で指し示す方向。


その一方向においてのみ包囲網は開かれているわ。



「罠だと思うか?」



突破口を確認した北条辰雄が問い掛けてくるけれど。



「さあ?どうかしらね。」



私にもどう判断すればいいのかなんてわからないのよ。



「だけど、わざわざ罠なんて用意しなくても一斉に魔術を展開すれば私達を殺せるはず。」



それなのに。


攻撃してこないのは逃がすため以外に考えられないわ。



「本気で逃がしてくれるつもりでしょうね。」



直也を信じて周囲を見回してみる。



今は敵対しているとは言え、

かつては仲間と呼んでいた竜の牙達の表情や瞳に殺気は感じられなかったのよ。



父さんを殺した私に対して襲い掛かろうとする者は一人もいなかったの。



…もしかしてみんなは知っているの?



それとも父さんの想いを受け継いで私達を見逃そうとしているの?



疑問は増えるばかりだけれど。


答えが返って来ないことだけは明白だったわ。



「これ以上は考えるだけ無駄ね。」



大人しく諦めて離脱するしかないみたい。



だけどその前に。


退路から視線を逸らして直也と向き合うことにしたのよ。



ここから離脱する前に、

もう一つだけ直也に言っておきたいことがあるから。



「今は退くわ。だけど竜の牙との戦いから退くつもりはないわよ。父さん達が何をしようとしていたのか、必ず真実を掴みとってみせるわ。そしていつか必ず竜の牙を滅ぼしてみせるっ!!」


「…紗耶香。」



私が私の意志を示したことで、

直也は悲しみをたたえた瞳で見つめてきたのよ。



「真実とは常に残酷なモノだよ。知らないほうが幸せなこともあるんだ。例えきみが望まないとしてもね。」


「直也の考えなんてどうでもいいわ。私は私の意志で動くだけよ!誰にも縛られず!誰にも屈せず!自らの意志を貫き通して生きること。それがウィッチクイーンの名の意味なのよ!」



女王の名を冠する称号。


その名前に含まれた誇りに賭けて私は私の想いを貫くの。



「誰にも私は止められない。誰にも私を止めることは出来ない。それがウィッチクイーンの価値。そしてその名を受け継ぐ私こそが竜谷家と長野家の跡を継ぐ者よ!私のいない竜の牙なんて偽物でしかないわ!!だから私が竜の牙を潰すの!そして本来の竜の牙を取り戻す!それが私の役目なのよっ!!」



…でもね?



「ねえ、直也。本来はあなたも私の仲間なのよ?長野家の血を引く者として私に従いなさい。それがあなたの宿命でもあるはずよ。」



敵ではなくて味方だと宣言してあげたの。


だけどそれでも直也は首を左右に振ってしまったわ。



「今はまだダメだ。今はまだその時じゃない。だけどもしもきみが真実を知って…それでもまだ戦い続ける道を選ぶのなら、その時はきみに従おう。長野家の直系として…ウィッチクイーンに従うことに異論はないからね。」



戦闘を放棄した直也は静かに一礼してくれたわ。


ウィッチクイーンである私に対するせめてもの礼儀として深く頭を下げてくれたのよ。



「生きるんだ、紗耶香。きみの生存こそが僕達の願いなのだから。」



…ふぅ。



これ以上は何を言っても無駄な様子ね。


だったらもう説得は諦めるわ。



「直也、あなたも生き延びなさい。そしていつか必ず帰ってきなさい。私は…ウィッチクイーンは長野家をいつでも受け入れるわ。」



説得を諦めて撤退することにしたのよ。



何も分からないまま。


何も知らされないまま。



雪と北条辰雄を引き連れて竜の牙から離脱したの。



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