1849/1983
愛すべき娘の姿
《サイド:竜谷元成》
…これで良い。
激しく燃え盛る業火。
容赦なく体を焼き尽くす炎を浴びても、
一切の悲鳴をあげることなく黙してこの身を委ねることにした。
…これで良いのだ。
死を恐れる気持ちなど欠片もない。
もちろん心残りは幾つもあるのだが、
罪深きこの身に終焉を与えてくれるのが娘の手であればこれ以上に望むことなど何もない。
…すでに俺の目的は達成されているのだ。
愛する妻を殺めてまで求めた唯一の目的。
守るべき沙耶香と淳弥は、
竜の牙から追放されて自由を手に入れた。
これ以上、求めるものなど何もない。
ただまっすぐに。
愛すべき娘の姿をこの目に焼き付けながら、
この世から消え去ることにしよう。
…すまない、紗耶香。
愚かな父を…許してくれ。
決して告げることの出来ない想いだけを遺して。
娘の手によって迎える死を、
自らの運命として受け入れることにしたのだ。




