無抵抗の父
「歎くな直也っ!ここで歎いている暇はないっ!!お前は生き延びろっ!俺と智典の想いを受け継いで目的を果たせっ!!」
「…ですが、元成様っ!」
「紗耶香を怨むな、直也。全ては俺の責任なのだ。だから紗耶香を…あの子を許してやれ。」
…どういうこと?
何を言っているの?
父は叔父を殺した私を責めるどころか、
私を庇うような発言をしているのよ。
…父さんの責任って何?
何もわからない。
だけど父は堂々とした態度で歩みを進めてくる。
「…紗耶香。俺の命が欲しければくれてやろう。今の俺では何も出来んからな。逃げることも戦うことも出来ないのだ。ならば最期は潔くお前の手によって終わりを迎えよう。」
「…父さんっ!」
…何も出来ないってどういうことなの!?
どうして戦おうとしないの!?
堂々とした態度で立ちはだかる父を目の前にして私の心は揺らいでしまったわ。
「どうしてっ!!どうして私達をっ!どうして母さんを裏切ったのよ!?」
泣きそうな想いで問い掛けてみたけれど。
「………。」
父は答えてくれなかったのよ。
何も言わずにただゆっくりと歩み寄ってくるの。
「父さんっ!!」
必死に問いかけてみるけれど。
「………。」
それでも何も答えてくれなかったわ。
…くぅっ!
だったらもう何も聞かないわ!!
戸惑いと憎しみを込めて、
再び炎を生み出すことにしたのよ。
「父さん…!母さんを殺したことを私は絶対に許さないっ!!」
あらゆる感情を込めて生み出す7つの炎に父の死を願う。
「さよなら、父さん…。」
何も知らないまま。
何も知らされないまま。
父を殺害することになったのよ。
「七星の輝きっ!!!」
7つの炎は天高く舞い上がってから父を目掛けて降り注ぐ。
その間の父は私の攻撃に怯えることもなく、
逃げる気配すら見せないまま、
最期の瞬間まで私の顔を見つめ続けていたの。
「………。」
ただ一心に私の顔を見つめる父は、
灼熱の炎を浴びながらも無言で生涯を終えたのよ。




