北条のために
「ありがとうございます。僕達を信じていただけることに感謝いたします。」
…この俺に感謝、か。
まさか竜崎一族に感謝される日が来るとはな。
想定外の出来事に直面してしまったが、
ひとまず今は北条のためにも微笑みを向けて対応することにした。
「感謝するのは俺のほうかもしれないな。以前は敵同士だったが、今回は北条を救ってくれたことに感謝している。」
それが素直な気持ちだ。
北条がどう思うかに関係なく、
北条を救ってくれた事実には感謝したいと思うのだ。
「きみに感謝はしている。…だが、な。」
だからと言ってなれ合うことは出来ない。
「過去の戦いによってきみが殺した同胞達の悲劇と悲しみを忘れたわけではない。」
北条を助けてくれたことには感謝するが、
それでも彼らを許すことは出来ないのだ。
「失われた仲間達の想いが俺の中にある限り、きみ達を認めることなど出来はしない。それを…そのことだけは覚えておいてほしい。」
北条の想いを汲み取って竜崎を見逃す決断を下したものの。
心の奥底では竜崎を殺したいと思う感情も確かに存在しているのだからな。
「北条がいなければ今すぐにでもきみ達を殺していただろう。例え敵わずとも最期まで戦い抜いたはずだ。」
本来ならば今すぐにでも殺したいと思う心を今は必死に抑え込んでいる。
「憎しみがあるが…きみ達は一つだけ良き行いをした。北条を救ってくれたことに対しては感謝している。だからその行いを考慮して一度だけきみ達を見逃そう。だが、もしも共和国を裏切るようなことがあれば…もしもそのような事態があれば…俺はこの命をかけてでもきみ達を殺すだろう。それが俺の役目だからな。」
部隊を預かる者として、
心に潜む感情を押し殺して、
竜崎に願うことにしたのだ。
「最後まで味方であることを願っている。北条に悲しい想いをさせないために気をつけるのだ。良いな?」
「…はい。分かっています。みなさんの想いを無駄にするようなことは決して致しません。」
「うむ。」
まっすぐに俺を見つめながら答える竜崎の真摯な態度が見れたことで満足して頷く。
「今はその言葉さえ聞ければそれでいい。きみ達が共和国の味方である限りは俺達もきみ達に協力しよう。」
共闘を約束してから竜崎を見送ることにした。
「行くがいい。自らの役目を果たす為に。そしてその身に背負う業と向き合う為に。自らの進むべき道を進むがいい。」
「はい。ありがとうございます。」
俺との話を終えた竜崎は本陣から立ち去ろうとしている。
…だが。
その直前になって突然、
緊急警報が国境に鳴り響いたのだ。




