敵か味方か?
《サイド:楠木博文》
「彼はすでに竜の牙ではないそうだ。」
幹部であるはずの竜崎が竜の牙ではないだと!?
…何を馬鹿なことをっ!
反乱軍に関しての説明を始めてくれる北条だが、
どこまで信用するべきかは判断に悩む状況だった。
「まさか竜崎一族が竜の牙を離反したというのか!?」
「ああ、そのようだな。」
…本気なのか?
情報の真偽がどうこうよりも、
北条が本気でその話を信じているのかどうかと言う部分に疑問を感じてしまう。
「それは確かな情報なのか?」
「本人がそう言うのだ。真偽を確かめる方法など他にはあるまい?」
…確かに。
竜の牙に確認するわけにもいかないからな。
裏付けをとる手段は何もない。
だが、な。
だからといって簡単に信じられる話ではないのだ。
「そもそも反乱軍とは何だ?」
「そのままの意味だな。竜の牙から離反した部隊としか言いようがない。」
…竜崎が竜の牙を離反だと?
そんなことがあり得るのか?
「お前が疑問に思う気持ちは俺にもわかるが、彼らは俺達の味方だ。少なくとも打倒竜の牙という思想を掲げているからな。」
…竜の牙の打倒か。
言われてみれば反乱軍を名乗る部隊の軍旗は特徴的に思える。
『竜の牙を折る刃』
その旗印が真実であれば、
確かに彼らは竜の牙の敵対者なのは間違いないだろう。
…反乱軍、か。
彼らは竜の牙から離反した部隊であり、
現段階においては共和国の味方になるらしい。
「彼らは共和国との共闘の為にここまできたのだ。」
…俺達との共闘か。
どこまで本気なのかはわからないが、
竜の牙を壊滅させる為に共和国の力を借りようとしているという話なのだろう。
「信じて良いのか?」
戦力としてどうなのかという疑問もあるが、
元とはいえ竜の牙を信用しても良いのだろうか?
反乱軍の真意が理解できずに問いかけてみたことで、
これまで北条の隣に控えていた竜崎慶太が礼儀正しく頭を下げながら話しかけてきた。
「今は信じてくださいとしか言えませんが、米倉元代表と話し合って共和国に協力させていただこうと考えています。竜の牙という組織は僕達にとっても共和国にとっても共通の敵だと思いますので、お互いに協力したいと考えているのです。」
…竜の牙を倒す為に協力したい、か。
竜崎の言葉の意味は理解できるが、
やはり敵対していた事実があるために、
そうそう簡単に受け入れられる話ではなかった。
そもそも竜の牙が共和国に送り込んできた密偵ではないという保証がどこにもないからだ。
もしも反乱軍が裏切れば、
共和国は内部に敵を抱えることになる。
…俺の独断で判断できることではない。
反乱軍が敵か味方か?
その真偽に迷ってしまう。
「北条。お前は竜崎の話を信じているのか?」
竜の牙から離反した反乱軍という話がもしも偽りであれば共和国は爆弾を抱えることになるのだ。
…とは言え。
もしも味方であれば強力な戦力であるのは間違いないだろう。
かつて幾度も竜崎一族と剣を交えた経験があるからこそ、
竜崎一族の実力は嫌と言うほど身に染みている。
だからこそ。
それほどの強者が罠だった場合の恐怖を人一倍理解しているつもりでもあった。
「もしも彼らが敵だったなら、共和国は滅びるぞ。」
「………。」
恐怖を込めた瞳で竜崎を見つめてみても、
北条は笑顔を崩さな。
「確かにそうかもしれんが、俺は反乱軍を信じている。いや、信じなければなるまい。全てを疑って拒絶していては共和国はいつまで経っても孤立したままだからな。協力を求める者達がいるのなら、その者達に救いの手を差し延べて受け入れる。それが共和国の未来に繋がると俺は考えている。」
「例えそれが敵だとしてもか?」
「敵を味方に変えてこそ、真の平和は訪れるのだ。」
…敵を味方に、だと?
…は、ははははっ!!
自信を持って答える北条の意見を聞いたせいで、
少しだけ信じてみようと思えた気がした。
…相変わらずの甘さだな。
お前のそういう考え方は指揮官向きではない。
…だが、だからこそ。
お前という人間を信頼できるのだ。
人として信頼できると思うからこそ、
北条の言葉を信じてみることにした。
「良いだろう。きみ達の国境の通行を認めよう。我々国境警備隊を含め、陸軍はきみ達に手出ししないことを誓う。これからは自由に共和国内を行動すれば良い。ただし、一つだけ条件はあるがな。」
反乱軍の行動に関して一切の手出しをしない代わりに、
竜崎に対して一つの条件を提案しておく。
「きみ達に手出しはしないが、やはり無条件とはいかない。仮にも敵対していた過去がある以上は最低限の条件として監視を付けさせてもらいたい。」
「…分かりました。そちらの条件を受け入れます。」
俺が提示した条件を竜崎は素直に受け入れてくれていた。
文句一つ言わずに、
表情一つ変えずに、
堂々と監視を受け入れたのだ。
「どのような扱いでも文句は言いません。」
はっきりと答える竜崎を見て俺の中の疑いはさらに薄れたが、
立場上やらなければならないことはやらなければならない。
従順な竜崎に微笑みながら、
たた一つの条件を告げることにした。
「ならばきみ達に監視を付ける。」
…もちろん、監視役は他には考えられない。
「北条司令官。お前が監視を行うのだ。…と言っても、これは強制ではない。お前に強制する権限など俺にはないからな。だが拒絶すれば他の誰かに監視を委ねなければならないことになるだろう。」
「…ふむ。」
北条が自ら監視を行うのなら俺が言うべきことは何もない。
だがもしも監視を断れば、
俺の配下から監視役を出すことになる。
そうなれば当然、竜崎達は俺の監視下に入ることになるだろう。
「どうする?」
最終的な判断は北条に委ねるつもりでいる。
「他の者に任せるか?」
「…ふっ。はっはっはっは!!」
北条自身に判断を委ねたことで、
北条はいつも以上に楽しそうな表情を見せて笑い出したのだ。




