嫌と言うほど
…そう言えば、ここにくるのは久しぶりだったな。
以前ここに訪れたのは何か月前だっただろうか?
はっきりとは覚えていないが、
国境を離れた俺達は奏の案内を受けながら見覚えのある山道を進みつつ無事に本陣まで移動することが出来た。
「楠木司令官!おられますでしょうか!?」
「ん?」
声をかけながら本陣を進む奏に気付いたのだろう。
即座に楠木博文が出迎えた。
「どうした?前園副隊長。国境で何かあったのか?」
疑問を問いかける楠木だが、
奏が答える前に俺も近づいていく。
「久しぶりだな。楠木。」
「ん…?なっ!?北条!?何故お前がここにいるっ!?」
「ははっ。まあ、少々複雑な事情があってな。話せば長くなるのだが、まずは俺の話を聞いてくれないか?」
「あ、ああ…もちろんだ。話を聞こう。」
戸惑いながらも俺の話に耳を傾けてくれる楠木に大まかな事情を説明することにした。
「始まりはセルビナ王国との戦争になるのだが…。」
国境を乗り越えてきたセルビナ軍との戦いの最中に竜崎雪が率いる反乱軍が現れたこと。
そしてセルビナ軍に大きな被害を与えて、
数時間もの足止めに成功したことが全ての始まりと言えるだろう。
それが俺と反乱軍との出会いになる。
その後、俺は反乱軍に合流することになった。
瀕死の重傷を負って倒れたところを雪に助けられたからだ。
それからしばらくしてミッドガルム国内にいた反乱軍とも合流したことで、
現在はこの国境に戻ってきたという流れになる。
「…とまあ、これが今、俺がここにいる理由になる。」
大まかな理由を説明したあとで、
反乱軍に関しての説明もしておく。
「まあ、俺も全てを知っているわけではないがな。」
竜崎達から伝え聞いた話の内容を楠木に伝えることにした。
「彼等は現在、竜の牙から離反した反乱軍という立場らしい。」
竜の牙ではないことを明確に宣言してから、
背後に控えている竜崎を呼び寄せる。
「こっちに来い。」
「はい!」
俺の指示を受けた竜崎が前に歩み出る。
「初めまして、楠木さん。」
「な…まさかっ!?」
丁寧に一礼してから挨拶をする竜崎を見た楠木の表情が一瞬にして恐怖に固まるのが見えた。
「まさか!あの竜崎なのかっ!?」
楠木もかつては竜崎一族と敵対していた過去を持っているからな。
竜崎慶太との直接的な面識はない様子だが、
竜崎一族とは幾度となく戦場で対立していたのだ。
だからこそ楠木は竜崎の名を嫌というほど覚えているはず。
「この数年の間、姿を消していたはずのお前が何故今になってここにっ!?」
「まあ、落ち着け。」
戸惑い続ける楠木との話を進めるために、
竜崎を呼び寄せてから改めて説明を続けることにした。




