前園奏
《サイド:北条辰雄》
「動くなっ!!!」
「ミッドガルム軍か!?」
「この先は共和国だぞっ!!」
国境を超えたばかりの反乱軍を共和国の国境警備隊が取り囲んできた。
武器を構えて周囲を取り囲む国境警備隊の数はざっと100名ほどだが、
誰もが殺気立った瞳でこちらを睨みつけている。
…さすがにミッドガルム側からの侵入者に対する警戒心が高いな。
当然と言えば当然の対応なのだが、
もう少し冷静になってもらわないことには説得も難しい。
「今すぐに引き返すなら手出しはしないっ!!早々にここから立ち去れっ!!」
…ふむ。
一方的に警告してくる国境警備隊の中に知り合いがいないかを確認してみる。
…部隊がいるということは、当然ここには指揮官もいるはずだからな。
末端の兵士の顔までは覚えていないが、
指揮官の顔なら分かるかもしれない。
…この部隊の指揮官は誰だ?
国境警備隊をゆっくりと見回してみたことで、
すぐに顔見知りを発見することが出来た。
…前園副隊長の部隊だったか。
だとすれば話は早い。
「そう殺気立つな、奏。夜間とはいえ、俺の顔が分からんわけではあるまい?」
「…えっ!?」
俺が話しかけたことで、
国境警備隊の副隊長を務める前園奏が緊張した面持ちで駆け寄ってきた。
「まさか!?北条司令官なのですか!?どうしてここに!?」
「まあ、色々とあってな。悪いが奏、楠木博文に会いたいんだが、あいつは今どこにいる?」
「…えっと。楠木司令官でしたら後方の本陣におられるはずです。」
「今から会えるか?」
「あ、はい。すぐに連絡をとります。…ですが、後ろの方々は?」
反乱軍に視線を向けた前園奏が問い掛けてきた。
「味方…ですか?」
…おそらくな。
「友軍であることに間違いはない。」
「………。」
見覚えのない部隊に疑問を感じる様子の奏だが、
この場で竜の牙の名を出すわけにはいかないだろう。
「これから彼等と共に米倉元代表に挨拶に行くつもりなのだが、ここで立ち話もなんだからな。ひとまず本陣に案内してくれないか?」
「あ…は、はいっ。分かりました。」
案内を願う俺の指示を受け入れてくれた奏が、
素直に国境警備隊の部隊を下げてくれた。
「それでは本陣にご案内します。」
俺に対する信頼によって反乱軍を共和国内部に招き入れた奏は、
そのまま俺達を引き連れて本陣までの案内をしてくれたのだ。




