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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1832/1848

霊安室

《サイド:米倉宗一郎》



午後11時を過ぎた頃。



首都グランバニアで最も大きな教会の地下にある霊安室へと訪れた。



「…多くの者が亡くなったな。」



この部屋に集められた膨大な数の遺体を見て思う。



これは俺の責任だ…と。



ここには竜の牙との戦いによって倒れた兵士達の遺体が数多く集められているのだが、

その数は数百どころか数千にも及ぶ。



もちろん全ての犠牲者を集めることなど出来ず、

町中の教会やお寺にも分けられて各地でそれぞれに葬儀の準備が進んでいるのだが。



…この犠牲は全て俺の責任だ。



俺の命を狙う竜の牙が起こした事件なのだからな。


戦いに巻き込んでしまった事実に対する責任は負うべきだろう。



…いっそこの身を竜の牙に差し出してしまえば、それで済むのかもしれないな。



俺が死ぬことでこれ以上の被害を防げるかもしれないからだ。



…だが。



今はまだ死ぬわけにはいかない。



せめて慶一郎の仇をとるまでは、

死んで楽になることなど出来はしない!



…竜谷元成を殺すまでは。



死を受け入れるわけにはいかないのだ。



他には誰もいない霊安室を歩む。


今ここにはいるのは俺だけだ。


生きているのは俺だけになる。



…慶一郎。



目の前に安置されている慶一郎の遺体を眺めただけで瞳に涙を浮かべてしまう。



「すまない…慶一郎。仕事に手間取ってしまって来るのが遅くなってしまった。」



冷たい体で物言わぬ慶一郎の遺体に声をかける。



「お前に救われたこの命を無駄にはしない。お前に救われたこの命で…俺はお前の想いを受け継ごう。」



竜谷元成を殺すこと。


その想いを受け継ぐためにここまで来たのだ。



「お前の死を無駄にはしない。」



自らの命を賭けて竜谷元成の魔術を封印した慶一郎の呪いは今もまだ続いているはずだ。


あれは並の魔術では解呪など不可能だからな。



竜谷元成の体に深く食い込んだ十字架のカケラは、

今でもまだ体内で魔力を分断する役目を果たしているだろう。



だからこそ表面的には回復魔術が効果を発揮するのだが、

体内においては発動されないことになる。



俺が貫いた傷をふさぐ程度のことは出来ても、

体内の負傷を完治させることは出来ないはず。



そしてあらゆる解呪も竜谷元成の体内に影響を及ぼすことが出来ない。



…つまり。



魔術での解呪は出来ないということだ。



もちろん物理的に取り除くことは不可能ではないが、

数百、数千のカケラの全てを取り出すなど不可能に近い至難の業だろう。



もはや竜谷元成は生涯、

魔術を使うことができない。



「今から追えば国境で竜谷元成を取り押さえられるかもしれない。今からでもまだ間に合うはずだ。」



その為の準備として今まで会議を行って出発の準備を進めていたのだ。


そして出発の前に慶一郎に挨拶をしようと考えて霊安室に訪れた。



「これから俺はミッドガルム方面に向かう。竜の牙の部隊が北西の方角に逃げたのは確認済みだからな。おそらく奴らは国境を強行突破してミッドガルムに逃れるつもりなのだろう。だがその前に…俺の手で竜谷元成を始末するつもりだ。」



このままここで桜井由美の合流を待っていては竜谷元成を取り逃がしてしまうことになるだろう。



「竜谷元成が共和国から離脱する前に俺がこの手でトドメを刺す。それがお前に出来るせめてもの手向けだ。」



力尽きた慶一郎に代わって竜谷元成を始末する。


その想いを誓いに変えて別れを告げることにした。



「お前の体は明日の朝にはジェノスに運ばれることになっている。お前の家族にも明日には報告が届くだろう。俺には何もしてやれないが、残された家族の面倒は近藤誠治に任せるように指示を出してある。だからあとのことは近藤誠治が上手くやってくれるはずだ。」



全ての準備を終えて、

伝えるべきことを全て伝えてから慶一郎に背中を向ける。



「安心して眠れ。」



一言の想いと共に慶一郎をこの場に残して、

霊安室を離れることにした。



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