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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1825/1848

方針の変更

《サイド:澤木京一》



…さて、と。



そろそろ午後7時頃だろうか。



現在、僕達は魔術師狩りに対抗する為に、

イーファの西側にある港町を目指しているところだ。



桐島さんを先頭としてシェリルが隣に並び、

僕達が後を付いていく形で歩き続けている。



すでに日が沈んで夜が訪れた街道は薄暗いけれど、

月明かりに照らされながら歩みを進めていく。



そうして知らない地域を進んでいた途中で、

最も恐れていた事態が起ころうとしていたんだ。


出来ることなら聞きたくないと思っていた報告が、

僕達の下に届こうとしていた。



「もう少しで目的の町だな…って、ん?あれは?」



笑顔で告げる桐島さんの視線が、

とある一カ所で止まる。


そして動きを止めてしまった桐島さんにつられて、

シェリルや僕達も動きを止めてしまったんだ。



「どうしたの?」


「どうしたんですか?」


「………。」



問い掛けるシェリルと僕に、

桐島さんは緊張した面持ちで答えてくれた。



「何か嫌な予感がする。」



…嫌な予感?



呟いた桐島さんの視線の先には、

魔術師ギルドに所属する仲間の姿が見えた。



どうやら伝令部隊のようだね。


明らかに僕達に向かって近づいてきているように思えるからだ。



「何かの報告でしょうか?」


「…だと思うが、あの様子だと良い報告ではなさそうだな。」



…ああ、それはまあ、確かに。



妙に慌てているような雰囲気が感じられるからだ。


一心不乱に駆け寄って来る伝令部隊の姿を見ただけで僕達も嫌な予感を感じてしまっていた。



「何かあったのかしら?」



疑問を感じるシェリルと共に伝令部隊の到着を待っていると。


駆けつけてくれた伝令部隊は、

息を切らせながらも桐島さんへの報告を急ごうとしていた。



「た、大変です、桐島さん!!」


「どうした?何があった?」


「そ、それがっ!イ、イーファがっ!!イーファが共和国に対して宣戦布告を宣言したんですっ!!」



…はっ!?



「何だとっ!?」



…和国に対しての宣戦布告?



…それってつまり。



イーファまで戦争に参加するということなのか?



宣戦布告という言葉の意味を、

僕達は即座に悟ってしまった。



「ついにイーファまで動くのかっ!!」



…これはまずい。



中立国であるはずのイーファが、

共和国に対して敵対体勢をとってしまったからだ。



共和国とセルビナ王国の戦争の行方次第ではイーファが動く可能性も考慮してはいたけれど。


まさかこれほど早く動くなんて思っていなかった。



「何故、突然に…っ?」



桐島さんの疑問に伝令部隊が即座に答えてくれた。



「詳しい情報は不明ですが、セルビナ王国の海軍が全滅したことがきっかけのようです。海軍を失ったセルビナ王国は陸軍も国境において苦戦している為に近隣諸国に援軍の要請を出したもようです。」


「その要請にイーファは応えたということか?」


「はい!そのようです。」


「なるほどな。イーファの行動は面倒だが、セルビナ王国が追い詰められているのは間違いなさそうだな。」



詳しい戦況はイーファでは分からないけれど。


セルビナ王国が追い詰められているのは僕も十分に想像できた。



「共和国も頑張っているんですね。」


「ああ、そうだな。だが、セルビナの海軍が全滅か。この短期間でよくそこまで持ち込めたな…。」



通常なら数日はかかるはずの海戦を僅か2日程度の間に優勢に持ち込んだ共和国の実力は僕達も驚くほどだった。



「米倉元代表の力か?それとも別の誰かか?まあ、詳細はともかく、共和国が優勢ならそれだけでもまだマシか。」



…ですね。



共和国が滅ぶかもしれないという危機感が少し薄れたんだ。



「だが、イーファまで動くとなると。せっかくの優勢も再び泥沼になりかねないな。」



イーファの軍事力は決して大きくはないそうだけど。


中立国のイーファが動けば他の国も同調してセルビナ王国に援軍を送りかねない。



「イーファの進軍を止めなければ、セルビナ王国の戦争は悪化するだろう。」



セルビナだけだからこそ共和国は辛うじて戦い抜けている部分がある。


だけどここに他国が加われば、

共和国は一気に窮地に立たされるかもしれないからだ。



「セルビナ王国が降伏するまでの短期間だけでもイーファ国の部隊を足止めする必要があるな。」



…それはそうなんだけど。



桐島さんの判断はもっともだけど。


こちらの戦力は国内全域の魔術師を集めてもせいぜい300人程度のはず。


たったそれだけの数でイーファの全軍を抑え切れるはずがない。



「さすがに戦力が足りないのでは?」


「ああ、全滅は必至だろうな。」



だけど僕達が動かなければ、

共和国が滅びる可能性がある。



「俺達だけでどこまでイーファを押さえ込めるのかが、共和国の運命の分かれ道だな。」


「そうですね。」



セルビナ王国への援軍を阻止することが出来れば、

共和国はセルビナに勝利できるかもしれない。


だけどもしも阻止できなければ、

共和国は連合軍に飲み込まれて壊滅する可能性が高くなる。



「迷っている暇はなさそうだな。」


「妨害工作で決定ですか?」


「それしかないだろう。」



イーファ軍との戦いを決めた桐島さんは、

再び伝令部隊に問い掛けていた。



「イーファ軍の動向は?」


「魔術師狩りを中断して、セルビナ王国への進軍の為に準備を進めているようです。」


「規模は分かるか?」


「およそ2万。それがイーファの総力です!」



…2万か。



それほどの軍勢に対して僅か300人だけで足止めが可能かどうか?



疑問は尽きないけれど。


ここで悩んでいても解決しないとも思う。



「一旦、偵察が無難では?」


「ああ、そうだな。とにかくまずは首都イーファを目指すことにしよう。」



僕の提案は否定されることなく、

目的地が港町から首都イーファに切り替わることになった。



「全ての仲間達をイーファに集結させろ!」


「分かりましたっ!!」



指示を受けて行動を開始する伝令部隊を見送った桐島さんが僕達に振り返る。



「どうやら訓練をすっ飛ばして実戦をやらなければいけないようだ。共和国を守る為にイーファ軍と激突する。その戦いに参加するか?」



参加の意思を確認してくれる桐島さんだけど、

ここで断るつもりなんてもちろんない。


だから僕達はしっかりと頷くことにしたんだ。



「もちろん協力させていただきます!」


「何もせずに逃げるつもりはないわ!」


「俺達もな。」



僕とシェリルに続いて康平達も参加の意思を示していた。


その結果として桐島さんは目的地の変更を宣言したんだ。



「これから首都イーファに向かう。一度戦闘が始まればもう後には退けないだろう。命の保証は出来ないが、全員、生き残ることを優先して立ち向かえ。」



方針を変えた桐島さんが首都イーファを目指して移動を開始する。



共和国を守る為に。


イーファの行軍を止める為に。



魔術師狩りの部隊ではなくて、

イーファ全軍を相手に立ち向かうことが決まったんだ。




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