1819/1848
ベノムバイト
「ベノムバイト!!!!」
魔術名を宣言すると同時に俺のルーンが砕け散る。
そして十字架のカケラだけが竜谷元成へと降り注いでいく。
「…何だ?失敗したのか?」
竜谷元成が疑問を感じるのも当然だろう。
無数に降り注ぐ十字架のカケラが竜谷元成の体の各所に突き刺さっているが、
見た目はそれだけだからな。
かすり傷程度の痛みを生み出すだけで、
それ以上の変化は起こらないはずだ。
「ふん。最後の最後でしくじるとはな。それでは仲間の死は無駄だったとしか言いようがない。」
………。
ルーンを失い。
魔力も使い果たして。
生命力までもが尽き果てようとしている状況だが。
それでも俺ははっきりと笑みを浮かべて見せた。
「失敗ではない…。これで…これで良いのだ。これで…俺の想いは果たされる。」
第2の禁術も成功した。
これでもう思い残すことは何もない。
…いや。
心残りはあるか。
ジェノスに残してきた家族のこれからを想うと割り切れない気持ちはある。
…だが今は。
竜谷元成を殺せるのなら俺は俺の死を受け入れよう。
…すまない。
意識が失われる最後の瞬間まで家族の姿を思いながら。
自らの命を引き換えにして。
未来を米倉様に託して。
40年の生涯を終えた。




