三倉健一の最期
《サイド:神崎慶一郎》
…お前だけは忘れはしない!
「竜谷元成!お前だけは忘れはしないっ!!」
俺達の前に立ちふさがる男の名は竜谷元成。
この男こそが竜の牙をまとめる幹部の一人だ。
「5年前のあの日の絶望を…俺は今でも忘れてはいないっ!!」
「5年前…?ほう、なるほどな。」
ようやく俺のことを思い出した様子だな。
「アストリアにおいて俺の妨害を試みて全滅した共和国軍の残党か…。」
…くっ!
言われた言葉に反論できないのが悔しいが、
汚名は今から返上すればいい。
「…ああ、その通りだっ。」
アストリア王国で王族の暗殺を行った実行犯が竜谷元成であり、
かつて俺は竜の牙の暴挙を食い止める為にアストリア王国に潜入していたのだ。
そして黒柳大悟や朱鷺田秀明を含めた多くの仲間達と共に作戦を実行したのだが結果は失敗だった。
今ここにいる竜谷元成に勝てず、
死の直前にまで追い込まれてしまったのだ。
別動隊を率いる朱鷺田秀明を撤退させることは出来たものの。
黒柳大悟が竜谷元成の攻撃で倒れてしまい。
俺も死を待つだけの状況になってしまったその時に。
自らの命を引き換えにして俺達を守ってくれた人物がいた。
その人物のおかげで竜谷元成からの逃亡に成功した俺は大悟を救出してから竜の牙から逃亡して、
すでに唯一の生存者になってしまっていた朱鷺田秀明と合流して王都を離脱した。
それが5年前の戦いの全てだ。
そして。
生まれて初めて真の絶望を知った戦いでもあった。
「あの時。三倉健一が犠牲になってくれたことで俺達は生き延びた。三倉が自らの命を引き換えにしてまで俺達を守ってくれたから生き延びることが出来たのだ!」
アストリア王国において死亡したとされる三倉健一。
三倉純の兄でもある彼の生存は不明とされていたが、
俺だけは真実を知っている。
この目ではっきりと最期の瞬間を見届けていたからだ。
…命を賭けてまで俺達を守ってくれた想いを忘れることなど出来るはずがない!
最期の瞬間に俺に全てを託してくれた三倉健一の想いだけは今でもはっきりと覚えている。
「お前達を止めてみせる!それが残された俺の使命だっ!!」
多くの仲間の意志を受け継いで竜谷元成に立ち向かう。
5年前のあの日から決して使うことのなかったルーンを構えて、
亡き三倉に誓いを立てることにした。
「竜谷元成は俺の手で終焉を迎えさせる!それが三倉の為に出来る最期の手向けだっ!!」
友に捧げる誓い。
たった一つの想いを込めて十字架をかざす。
「ここが俺達の終着点だ!」
手の平に収まる程度の大きさの十字架に想いを込めて、
最期の魔術を発動してみせた。




