死体の山
《サイド:長野淳弥》
…なっ!?
何だこれはっ!?
グランバニアの町の北部にたどり着いた俺達は予想外の出来事に戸惑うことになってしまった。
「冗談だろ!?」
「ひどい…っ。」
「最悪ね…。」
傍に寄り添う里沙と百花もまた俺と同様に戸惑いの表情を浮かべている。
「ここで何があったの!?」
「私達が思う以上の敵がいるということよ。」
疑問を言葉にする里沙に、
百花がそっと手を繋ぎ合わせていた。
さすがの百花も目の前の惨劇は直視できないんだろうな。
町の様子から視線を逸らして、
里沙と向き合っている。
「本物のバケモノがいるのよ…。ここには…」
声を震わせながら呟く百花の周囲には、
数え切れないほどの死体が転がっている。
一方的な攻撃を受けて絶命している死体の山。
原形を留めている遺体はごく僅かで、
ほぼ全ての遺体が人の形すら失っているようだ。
死体だらけの惨劇。
血まみれの惨状。
生存者皆無の地獄。
目に見える範囲内において生存者は一人もいない。
どこを見ても死体…死体…死体。
死体の山だ。
絶望的としか言いようのない状況に言葉を失ってしまう。
…一体、どんなバケモノがいるんだ!?
グランバニアの町の北部を血の海に変えて死体の山を積み重ねた竜の牙の殺戮は、
大通りを見ただけで吐き気を感じるほどだった。
…生存者が一人もいないだと!?
見える範囲だけでも数千規模の死者だ。
これはもうただの兵士の仕業じゃない。
圧倒的な惨事。
本来なら喧騒と賑わいに満ちているはずの大通りが、
今では物言わぬ死骸が満ちて静寂だけが大通りを支配している。
…一体、誰がっ?
並の魔術師では起こせない一方的な殺戮。
治安維持部隊や陸軍でさえも歯が立たなかった何者かの存在を考えただけで直感的に恐怖を感じてしまう。
…まさか?
まさかっ!?
…幹部がグランバニアに潜入しているのか!?
最悪の答えにたどり着くまでに何秒もかからなかった。
…誰が来ているんだっ!?
力を封印しているせいで魔力の波動が感知できない。
指輪を外せばすぐに波動の主を把握できるのだが、
その考えにたどり着く前にこれまでにないほどの爆音が町の西側から鳴り響いてきた。
「今度は何だっ!?」
激しい爆発音と共に揺れる町。
突発的に起きた地震によって、
立っていることさえ出来ずに地面に倒れ込んでしまう。
…くそっ!
片膝をついて地震に耐える。
そしてすぐにでも状況を判断しようとしたのだが。
「きゃぁあっ!!」
「くぅ…っ!?」
「…ちっ!」
里沙と百花は地面に倒れてしまい、
芹澤啓輔も体勢を崩して地面に手をついていた。
「もうっ!何なのよっ!?」
苛立つ里沙の気持ちは分からないでもないが、
ここで叫んでいても解決しない。
倒れた里沙を助け起こしてから町の西側へと視線を向けることにした。
…震源地はどこだ!?
激しい黒煙が立ち上り、
幾つもの悲鳴が響き渡る方角に視線を向けてみる。
「向こうだっ!!」
里沙達に声をかけてから全力で駆け出す。
「行くぞっ!!」
「うん!」
「ええ。」
「………。」
率先して走る俺のあとを追って、
里沙と百花と芹澤啓輔も走り出したようだ。
…ここからは時間との戦いだな。
町の北部に惨劇をもたらせた人物を追跡するために、
俺達は町の西側へと移動することにした。




