プリンセスガード
《サイド:芹澤里沙》
…や、やっっば!!
こ、これって、どう考えても危険よね?
明らかに私から淳弥に抱き着いているからよ。
その事実に気付いてすぐに淳弥から離れたんだけど。
たぶん…もう手遅れよね?
「こ、これは…っ!あの、そのっ!?別に他意はないって言うか…何て言うか…っ!?」
襲撃者がどうこうよりもね。
兄の異常な強さに怯えてしまって、
無意識のうちに淳弥の背中に隠れてしまっていただけなんだけど。
それでも私が男性に触れていたという事実に間違いはないのよ。
「ちょっ!?ちょっと!!こっちに来ないでよっ!」
激しく動揺しながら慌てふためく私に、
兄がゆっくり歩み寄ってくる。
右手に聖剣を持ったままで、
ゆっくりと近づいてきているのよ。
「やはりお前は俺の手で…っ!!」
「…ったく、うるさいわね〜。」
…え?
殺意を込めながら私を見つめる兄の前に、
百花が立ち塞がってくれたの。
「里沙には指一本さえ手出しさせないわよ!」
暴走状態の兄に怯むことなく立ち向かってくれる百花だけど。
「それは俺の台詞だ。」
兄は歩みを止めようとはしなかったわ。
「里沙は俺のモノだと言ったはずだ。お前達にくれてやるつもりは一切ない!」
…あうぅぅっっっっ。
一歩一歩、確実に縮まっていく距離。
徐々に近づいていく距離が、
私には死の宣告のように思えたわ。
「里沙を守れないお前達に里沙を預けるくらいならば、俺がこの手で里沙を保護するまでだ。俺の手で…『永遠』にな。」
…うぅぅぅ。
怖くて一歩も動けなかったわ。
この場から逃げ出すことさえできなかったのよ。
…い、嫌よっ!
永遠の保護なんて、
そんなの受け入れるくらいなら死んだほうがましだと思ってる。
「…こ、来ないでっ!!」
「ふん!里沙は俺のモノだ。他の誰にも渡しはしない!」
私を手に入れる為に冷酷な視線を百花に向けて聖剣を構える兄だったけれど。
「だから…勝手にあなたのモノにしないでもらえるかしら?」
百花は負けずに立ち向かってくれたのよ。
「里沙は私が守るわ!」
「それは俺の役目だ!」
互いに一歩も引かない睨み合い。
百花と兄は私の所有権を賭けて全力で奪い合おうとしているの。
「里沙を返してもらおうか?」
「言ったはずよ!里沙はあなたのモノではないわ。だから里沙は渡さないし、里沙は私が守り抜いて見せる!!」
圧倒的な実力差があるのに。
それでも兄という強敵を前にして、
百花は立ち塞がってくれたの。
「里沙は私が守るわっ!!」
想いを込めて宣言する言葉と同時に百花の両手に光が溢れ出す。
光り輝く百花の手。
その光の正体を百花は即座に悟ったみたい。
「今なら出来る!!」
光に想いを込めて、
自らの力に形を与えたのよ。
「私は絶対に退かないわ!里沙は私が守り抜いてみせるっ!!」
友情を示す為に。
そして百花自身の想いを示す為に。
この場でルーンを完成させたのよ。
「プリンセスガード!!」
護衛の名と共に生まれるルーンは一振りの聖剣。
愛する人を守る為の武器としては、
兄の『セーブ・ザ・クイーン』に匹敵する騎士剣だと思う。
込められた意味は全く違うけどね。
どちらも私を想う心から生まれた聖剣みたい。
「親友の苦難を見捨てるほど、私の心は腐ってはいないわよ!」
生まれたばかりの『プリンセスガード』を構えて、
堂々と兄の前に歩み出てくれたのよ。




