親友の為に
《サイド:矢野百花》
「里沙に手出しはさせないわ!」
聖剣を構えて立ちはだかる。
私の瞳は気力に満ちていて、
私の心は純粋な想いに満ちている。
今なら芹澤啓輔が相手でも負ける気なんてしないからよ。
「里沙は渡さないわ!」
背後で怯える親友を守る為に、
全力で芹澤啓輔を睨みつける。
「これは警告よ。そこから一歩でも私達に近付けば攻撃するわ!」
「…ふっ。」
全力で警告する私の言葉を聞いた芹澤啓輔は鼻で笑っていたわ。
明らかに私を見下しているのよ。
…だけど。
ただそれだけで、
私の警告を受け入れてくれたみたい。
「良いだろう。お前の想いを信じてもう少しだけ様子を見てやろう。だが、再び里沙を危険にさらすようであれば…その時はお前にも死んでもらうぞ。」
冷たく言い放ってからルーンを解除した芹澤啓輔は静かに口を閉ざしたわ。
「………。」
…諦めたの?
戦う意思を放棄して殺気を消し去った芹澤啓輔と向き合いながら、
私もルーンを解除することにしたの。
…ひとまず助かったようね。
戦闘になったらその時は全力で戦うつもりでいたけれど。
今の私ではまだ勝てるとは思えなかったから、
大人しく退いてくれたのは素直に嬉しく思えたわ。
…ふぅ。
見逃してもらえたと思った瞬間に、
どっと疲労感を感じてため息を吐いてしまったのよ。
精神的な疲労を感じたからなんだけど。
一瞬だけでも疲れを見せてしまったことで、
里沙が心配そうな表情で私を見つめていたわ。
「だ…大丈夫?」
「ええ。まあ、何とか…ね。」
体力も魔力も万全だけど。
精神的な疲労だけは残っているかしら。
それでも芹澤啓輔の前で弱気な態度を見せるわけにはいかないから、
精一杯の笑顔で微笑んでおくことにしたのよ。
「大丈夫よ。里沙は私が守るから。」
「ありがとう百花。それと…ごめんね。心配ばかりかけて…。」
………。
素直に謝ってくれる里沙だけど。
私としては複雑な心境でしかないわ。
決して里沙が悪いわけじゃないからよ。
…明らかに問題なのは芹澤啓輔なんだから。
里沙は何も悪くないはずよ。
それなのに。
異常な兄に悩まされている里沙が謝罪してくれているの。
それだけでどれだけ里沙が精神的に追い込まれているかなんて考えるまでもないわよね?
「…ごめんね。」
「良いのよ、里沙。」
何度も謝ってくれる里沙の表情に、
いつもの強気な性格は見えない。
だからこそ。
安心させてあげる必要があるわ。
「そんなふうに謝らなくて良いの。私が好きでしてることだから、里沙は気にしなくて良いのよ。」
「ありがとう、百花。」
…ふふっ。
和やかな雰囲気で微笑み合う。
そんな私達の間に長野君が割って入ってきたのよ。




