人としての魅力
《サイド:澤木京一》
…1万対2百?
イーファの軍隊の実力がどの程度なのかは知らないけれど。
普通に考えれば勝ち目なんてないんじゃないか?
数という差は魔術師にとって絶望的な戦いになる。
魔力が底を尽くのが先か?
敵が全滅するのが先か?
そういう戦いになるからだ。
「一応、聞くけど…勝てる見込みはあるの?」
「もちろんない!」
問い掛けたシェリルに、
桐島さんは自信を持って宣言していた。
「敵は通常の軍隊ではなくて陰陽師の部隊だからな。わずか200名程度では足止めにしかならないだろう。」
「…また陰陽師軍なのね。」
敵が陰陽師軍という話を聞いて、
シェリルは深いため息を吐いている。
…なのに。
それでも桐島さんは笑っていたんだ。
「魔術師狩りに陰陽師軍が動くのは基本だからな。よほどのことがない限り戦いは避けられないだろう。」
人を越えた力を持つ魔術師を全滅させる為には、
その力に対抗できるだけの戦力を集めなければいけないから。
国内の各地に広がる陰陽師達の戦力を一カ所に集める為に今まで時間がかかっていたというのは推測出来る。
けれど陰陽師軍が集結してしまったのなら、
のんびりと静観してる余裕なんてないはず。
「俺の能力も相手が陰陽師軍ではあまり意味がないからな。だからこそ共和国に協力を要請したわけだが、ひとまずシェリルが来てくれただけでも有り難い。対陰陽師軍との戦いにおいてシェリルの能力は有効的だからな。」
…確かに。
魔術を奪える桐島さんの能力は、
相手が魔術師であれば強力な能力だといえるけれど。
相手が魔術師でない限りは何の意味もないからね。
相手が陰陽師だと分が悪いはず。
だけどシェリルは違う。
あらゆる魔術を瞬間的に使い分けられるシェリルの能力は陰陽師軍の攻撃に対して十分に対応できる能力だ。
「澤木京一君の噂も聞いている。前衛としては有能らしいな。是非ともその力で活躍してほしい。」
心からの笑顔で期待を込めてくれる桐島さんは、
シェリルを相手にしている時はふざけていたように思えたけれど。
もしかしたら普段から明るい性格で、
誰が相手でも変わらないのかもしれないね。
…シェリルが惹かれるのも分かる気がするよ。
人として信頼できる。
そう思わせるだけの魅力が桐島さんの笑顔から感じられるんだ。
…これも経験の差かな?
僕と桐島さんでは大きく違う。
…あまり心を開くのは得意じゃないからね。
桐島さんと違って人見知りをしてしまう僕は他人と打ち解けることが少ないんだ。
時間をかけてゆっくりと相手を判断するせいで、
桐島さんのように明るい笑顔を振り撒くのはあまり得意じゃなかった。
…僕とは違うね。
それを羨ましいと思う気持ちがあった。
そして自分という殻を壊して、
桐島さんのようになりたいと思う気持ちもあった。
…とは言え。
そんな簡単にはいかないだろうね。
性格を変えるのは難しいから。
だからこそ僕には無理だとも思う。
桐島さんのように生きることも。
シェリルを想うことも。
壁の高さ感じて諦めてしまうんだ。
…だけど。
一度気付いた想いは止まらないとも思う。
…シェリルを忘れるのは時間がかかりそうだね。
桐島さんとの関係が壊れれば良いと思う気持ちもあるけれど。
そんな展開を願う僕自身が嫌だと思う気持ちもある。
…欲しいモノがあるのなら、自分の手でつかみ取るべきだ。
魔術師としての成長も。
傍に居てほしいと願う相手も。
自分の力でつかみ取らなければ意味がない。
…これから何をするにしても。
僕が自信を持って行動できるようになってからかな?
シェリルへの想いはそのあとに考えればいい。
「全力を尽くします!」
「ああ、頼む。」
気合いを込めて応える僕の言葉を聞いて、
桐島さんは満足そうに頷いてくれていた。




