作戦の内容
《サイド:シェリル・カウアー》
…ふう。
少し気持ちを落ち着けたほうが良いわね。
決して私のせいではないけれど。
少なからず醜態を見せてしまったのは事実だから、
一度呼吸を整えてから京一達に説明することにしたのよ。
「はぁ…。改めて紹介するわね。」
まずは亮平を京一達に紹介しておく。
「このどうしようもない痴漢犯罪者が桐島亮平よ。イーファ魔術師ギルドにおいて何故か最強の魔術師なんだけど。まあ、御堂龍馬や天城総魔に比べれば格下なのは間違いないわね。」
…私や京一だと絶対とは言い切れないけれど。
「京一とはほぼ互角でしょうね。悔しいけど私よりも亮平のほうが実力が上なのは確かよ。多分、京一抜きなら全員で挑んでも勝てないかもしれないわ。」
出来ることならボコボコにしてやりたいけどね。
だけど能力や才能による相性の関係で、
亮平を上回るのはなかなか難しいのよ。
…まあ、京一だけは10回中7回は勝てるんじゃないかしら?
だけどそれも前半は敗北を繰り返したうえで、
ある程度慣れてから勝てるようになるという流れになると思うわ。
それくらい亮平の能力は厄介なのよ。
強力な手札の多い御堂龍馬には及ばないでしょうけど。
それでも私達を上回る程度の実力はあると判断するべきなの。
「…性格はアレだけど、実力は本物よ。あまり認めたくはないけれど…亮平から学べることは沢山あると思うわ。」
遠回しに褒めつつも、
多分に嫌味を含ませておいたわ。
それなのに。
不名誉な紹介をされた亮平は気分を害した様子もないまま、
明るい笑顔で京一達に微笑んでいるのよ。
「改めて、俺が桐島亮平だ。一応今日からきみ達の教育係ということになっている。まあ、教育係と言っても特に何かをするつもりはないが、とりあえず分からないことがあったらその時に遠慮なく聞いてくれればいい。」
投げやりな態度で手短に挨拶を終える亮平だけど。
京一達はまじめな雰囲気で自己紹介をしていたわ。
「グランバニア魔導学園から来ました。澤木京一です。」
丁寧に一礼する京一に続いて、
他の仲間達も挨拶を続けていったのよ。
「盛長康平だ。」
「筑紫美優です。」
「私は那岐知美よ。」
「僕は菊池英樹です。」
それぞれに名前を告げてから亮平と握手を交わしてる。
そのあとで、私も亮平に挨拶をしておいたわ。
「とりあえずよろしくね。」
「ああ、任せておけ!」
自信たっぷりの笑顔で応えてくれた亮平は、
再び鞄の中に手を伸ばしてから今度は用意していた書類の束を手渡してくれたのよ。
「さて、ひとまず今回の作戦の内容を伝えておこうか。」
前置きをしてから、
全員に作戦を伝えてくれたの。
「今回の作戦は魔術師狩りの阻止と魔術師の保護が主要な目的になる。場所はここから南西に向かった先にある海沿いの小さな港町だ。その町にイーファの軍隊が送り込まれるという情報を入手したのが3日前になる。」
その時点ですでに共和国がアストリアとセルビナとミッドガルムに戦争を仕掛けられたという情報は亮平も知っていたみたいだけど。
イーファにいる魔術師達だけでは数が足りないと判断したようね。
多少なりとも戦力を分けてもらえるように共和国に協力を願い出たそうよ。
それが今から3日前の出来事らしいわ。
そしてその伝令を送ったあとにアストリア王国が滅び、
セルビナ王国が停戦を申し出てきたことで戦争は一時的に休戦。
その停戦の間に祖父の依頼を受けた私が今回もイーファまで来ることになったんだけど。
亮平が援軍を願い出てから私達がここに来るまでに、
すでに3日が経過しているということでもあるわ。
「共和国に援軍を頼んだことできみ達がここまで来てくれたわけだが、今からでもまだ十分に間に合うだろう。現地で待機している仲間達と首都イーファに潜んでいる仲間達からの報告に寄れば実際に部隊が動き出すのは明日の早朝からという話だからな。」
急いできたのが良かったんでしょうね。
魔術師狩りはまだ始まってないみたい。
だから今ならまだ間に合うと判断しているようね。
「ひとまず分かっている範囲で言えば魔術師狩りの部隊の規模はおよそ1万だそうだ。対するこちらは俺達を含めても僅か200名程度でしかない。たった200名で1万の軍を妨害しなければならないということになる。」
「そんなことが出来るんですかっ!?」
「まあ…やるしかないな。」
両軍の戦力差を聞いて戸惑いを感じる京一に亮平は笑顔で頷いていたわ。
「出来なければ同胞の命が失われることになる。出来るか出来ないかではなく、やらなければ多くの犠牲が出ることになるだけだ。」
「………。」
はっきりと答える亮平の言葉を聞いた京一は黙り込んでしまったのよ。




