喜怒哀楽
《サイド:澤木京一》
「ははははっ!お前はホントに面白い奴だな。」
照れたり怒ったり、
笑ったり泣きそうになったり。
そんなふうに感情をあらわにするシェリルを桐島さんが楽しそうに眺めているんだけど。
離れた場所から様子を眺めていた僕達にしてみれば、
これはかなり珍しい光景のように思えたんだ。
「シェリルが感情を見せるなんて…初めて見た気がするかもしれない。」
「…確かにな。」
「珍しいわよね〜?」
ボソボソっと呟いた僕の言葉を康平や筑紫さんが同意してくれていた。
「普段が普段だから、僕も笑わない人だと思っていたんだけど…。」
「あ!それは私も、私も〜!」
どうやら全員が同じ気持ちだったようだね。
菊池君と那岐さんも驚いている様子だった。
僕達が知るシェリルは沈着冷静で、
なかなか感情を見せない性格だったんだ。
言葉遣いも大人っぽい口調だし、
どこか近付き難い雰囲気があった。
…それなのに。
桐島さんの前で見せるシェリルの行動はどう見ても一人の女の子で、
とても可愛らしく見えてしまうんだ。
…これが本当のシェリルなのかな?
僕の視線の先では、
今でも照れ臭そうな表情で桐島さんに抗議し続けているシェリルがいる。
…仲が良いんだな。
そう思った瞬間に言葉にできない感情が生まれたような気がしたけれど。
意識的に気付かないふりをすることにした。
…僕には入り込めないね。
この2日間の間にシェリルという人物を少しは知ることが出来たような気がしていたけれど。
それはまだホンの一角でしかなかったからだ。
…もう少し早く気付いていれば良かったのかな?
考えれば考えるほど心が沈み込んでいくような気がしてしまう。
幸せそうなシェリルを眺めているだけで、
どうしてももやもやとした気持ちを感じてしまうんだ。
だけど今は…静かに感情を押さえ込むことにした。
今の僕の目的はそこじゃない。
…僕は僕の為にここにいるんだ。
余計なことを考えてる場合じゃないし。
ここまできた目的を忘れるわけにはいかない。
…こんなところで嫉妬なんて感じてる場合じゃないんだよ。
僕は僕の道を進むことが優先になる。
そのために気持ちを切り替えて、
一歩を踏み出すことにした。
「あの…さ。シェリル。そろそろ僕達に説明してくれないかな?」
「………。」
これからのことが知りたくて話しかけてみたことで、
即座に冷静さを取り戻したシェリルは桐島さんの手を振り払っていた。
「いい加減、子供扱いしないでよねっ!」
『パシッ』と桐島さんの手を振り払ったあとで、
くしゃくしゃになった髪を手櫛で整えてから、
ようやく僕達に振り返ってくれたんだ。




