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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1780/1864

棟梁の判断

《サイド:黒柳大悟》



…ふむ。


…これは困ったな。



現在、海軍の艦隊を無人島の北部に停泊させているのだが、

どうやら思っていた以上に被害を受けている様子だった。



「補修作業の進行状況はどうなっている?」


「大変申し上げ難いのですが…。」



船大工の棟梁に問い掛けてみると、

棟梁は戸惑うような表情を見せながらも即座に報告を始めてくれた。



「各船の破損がかなり激しいために、完全な修理を行うのは難しいかと思います。」



…ふぅ。



やはりそうなるのか。



そもそもここには本格的な修理を行うための設備も資材もないからな。


出来る限り早急に設備の揃っている港に向かって、

本格的な修理を行う必要があるだろう。



「航行は可能なのか?」


「補修が終わり次第ですが、航海そのものは可能だと思われます。」


「戦闘はどうだ?」


「船の耐久力を考えると、次の戦闘には耐えられないかもしれません。」



…戦闘は不可能か。



「ならばセルビナに向かうのは不可能なのか?」


「どうでしょうか?実際にどこまで耐えられるかは分かりませんが、船大工としてはこれ以上の被害は沈没の危険性が高いと判断しています。」



…ふむ。



船大工の意見を聞き入れるとすると、

これ以上の戦闘継続は不可能ということになる。



…無理をして船を失っては意味がないな。



だが、国境で戦闘が続いている事態を考慮するなら、

早急にセルビナ本国へ攻め込まなければならない。


このまま撤退ではセルビナ軍の国境への援軍の阻止という当初の目的さえも果たせなくなってしまうだろう。



わざわざ海軍を率いて国境を迂回しているのは、

国境において行われているセルビナ軍と共和国軍の戦いにセルビナ軍が援軍を送り込むという手段を阻止するためという目的もあるのだ。


本当なら今すぐにでも国境に駆け付けて戦闘に参加したいところなのだが、

それでは海への守りが失われて敵艦隊の進行を見過ごすことになってしまうだろう。



…船の補修作業も重要だが、セルビナ王国に攻め込む必要もある。



敵の戦力を分散させつつ船の復旧作業も進める合理的な方法を考える必要があるのだが、

何もかもを成立させるというのはなかなかに難しいようだ。



…それでも方法は一つだけある。



危険だが、今はそれ以外に考えられないだろう。



命懸けの作戦にはなるが、

最善策なのも間違いないはずだ。



「棟梁、一つ聞きたいんだが。あと一度くらいの戦闘なら何とかごまかせないだろうか?」



船の応急処置を行ったのちに、

一度だけ海戦を耐え凌ぐことが可能か不可能か?



船をどこまで守りきれるかにもよるが、

ギリギリまで耐えることが出来るかどうかという疑問を問い掛けてみたことで、

棟梁は真剣な表情で答えてくれた。



「最善は尽くしますが、確約は出来ません。再びセルビナ軍に取り囲まれて船が被害を受けるようなら、その時は諦めるしかないと思います。」



…そうか。



俺の期待を否定はしないが、

決して賛同はしないという判断のようだな。


棟梁の様子を推測するに、

船の被害の大きさが窺い知れる。



…やはり漁船の大群による攻撃が影響しているのだろう。



命懸けの特攻によって共和国軍に突撃を続けたセルビナ軍の作戦によって、

15隻の艦隊はボロボロの状況のようだ。



…俺達の船はまだマシだが、他の船は危険なのだろうな。



旗艦と言える俺達の船は御堂君や鈴置君達の活躍によってあまり大きな被害はないものの。


セルビナ軍に包囲されていた15隻の船の被害は大きかったらしい。



…だとすれば。



沈まなかっただけでも喜ぶべきだが、

戦闘続行は難しいと判断する棟梁の意見も無視は出来ない。



…攻めるか、退くかだ。



軍の安全を考えれば素直に撤退するべきだが、

国境での争いを考慮すれば多少無理をしてでもセルビナ王国に攻め込む必要はある。



…賭けになるかもしれないな。



「港へは向かうが、その間に戦闘になる可能性は避けられないかもしれない。だとすれば、その戦闘に船は耐え切れるか?」


「出来る限りは耐えてみせます。」



絶対ではないということだ。


ならば質問を変えてみよう。




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