次は助からない
ゆっくりと意識を取り戻して目覚める。
夢の中で見た二人のことが忘れられなくて、
今でもまだ胸の奥底に残り続ける悲しみが消えないけれど。
ここで二度寝したとしても、
もう一度二人に会えるわけじゃないから。
だから今は、
嫌でも現実と向き合うしかないのよ。
…で?
ここは…どこなの?
瞳を開いて周囲の音に耳を傾けてみるけれど。
室内はとても静かで、
物音一つ聞こえなかったわ。
…だけど、それでもね。
すぐに気付くこともあったの。
「…成美?」
ベッドに横たわる私のすぐ傍に寄り添ってくれている成美が、
心配そうな表情で手を繋ぎながら私を見つめていたのよ。
「ずっと…ずっと傍に居てくれたの?」
「うん♪ずっと薫の傍に居たよ。」
流れ落ちる涙の雫。
成美の頬は涙で濡れていたわ。
「ふふっ。泣かなくても大丈夫よ。そんなに心配しなくても大丈夫。魔力を失って倒れていただけだから。」
泣くほど心配しなくてもね。
魔力さえ回復すれば自然と目覚めるものなのよ。
だから泣かなくても良いって言おうとしたんだけど。
…その前にね。
「とっても…とっても優しい人達だね。」
突然、成美が私じゃない誰かを褒め始めたのよ。
…どういうこと?
成美の発言に戸惑ってしまったわ。
「何を言っているの?」
誰のことを言ってるのかを訊ねてみると。
成美は涙を流したままで、
そっと微笑んでくれたのよ。
「素敵なお兄さんと…素敵なお友達だね。」
…えっ!?
成美の言葉を聞いて、
激しく動揺してしまったわ。
「どうしてっ!?」
どうして私が見た夢を成美が知ってるの!?
「ごめんね…。」
戸惑う私に成美は申し訳なさそうな表情で答えてくれたのよ。
「覗くつもりはなかったんだけど、私にも見えたの。たぶんきっと、秘宝の力だと思うけど…薫と手を繋いでいたからかな?薫の夢が見えたの。」
「夢が…見えた?」
「うん。」
兄貴と愛里の二人と再会した夢が、
成美には見えていたっていうこと?
「ごめんね。勝手に心の中を覗いてごめんね。でも…でもね。薫から手を離せなかったの。そうしなければいけないような気がして…離せなかったの。」
何度も謝罪してくれる成美だけど。
私としては文句を言うつもりなんて最初からないわ。
「それはまあ良いんだけど…。夢の中の出来事を全部知っているの?」
「…うん。全部見えたから、全部聞こえたから知ってるよ。」
…全部?
「それじゃあ、最後の女の子のことも?」
「うん。私が聞いた声と同じ人だったと思う。自信はないけど…多分同じ人だと思うよ。」
…やっぱり、彼女なのね。
『深海優奈』さん。
吸収の能力を持っていて、
魔力の供給も行える人物。
彼女が成美と私の魔力を回復させたのよ。
その事実が確信できたわ。
…だけど。
だけどこれが最後って言ってたわよね?
魔力の供給という事実によって少なからず深海優奈さんが生存している可能性があるかもしれないって思ったんだけど。
どうもその可能性が低くなったような気がするわ。
…これってもしかして?
兄貴や愛里と同じように、
遺された想いだけで協力してくれていたの?
もしも生存してるのなら最後という言葉の意味が分からない。
そもそも御堂君やクイーンから聞いてる話によると、
深海さんは天城君と共に兵器の爆発に飲まれて死亡したはずなのよ。
…と言うことは?
遺された力を私達に分け与えていたの?
もしもそうだとすれば今後の協力は望めないことになるはず。
だからもしもまた魔力が尽きて倒れた場合。
今度は深海さんの協力は得られないということよ。
…次は助からない、っていうことね。
次に倒れたら今度は自力で復帰するしか方法がないわ。
…もう無茶は出来ないわね。
それでも避けられない戦いはあるかもしれないけれど。
その時はその時と考えて、
ひとまず体を起こして室内を見回すことにしたの。




