残された願い
「私も!私も一緒にっ!!」
『ダメですよ、薫。』
『ダメだよ、薫ちゃん。』
…どうしてよっ!?
『薫は生きてください。』
『薫ちゃんには幸せになってほしいの。』
…でもっ!
「私はっ!!」
手が届かないことに絶望を感じて泣き叫んでしまったわ。
そんな私に、愛里が優しく語りかけてくれたの。
『泣かないで、薫ちゃん。私は薫ちゃんの笑顔が見たいから。』
…笑えないっ!
「笑えないわよっ!兄貴も愛里もいなくなったのにっ。笑えるわけがないじゃないっ!!私を一人にしないでよっ!!私も一緒にいさせてよっ!!」
悲しみが抑えきれなくて、
必死に泣き叫んでしまったわ。
そのせいで。
ついに愛里も涙をこぼしてしまったのよ。
『…一人じゃない。一人じゃないよ。薫ちゃんの傍には私達がいるよ。それに、ね。今の薫ちゃんには大切な人がいるでしょ?』
…大切な人?
『そう。常盤成美さん。彼女はね、今も薫ちゃんの傍で薫ちゃんが目覚めるのを待ってるんだよ。薫ちゃんが笑顔を見せてくれるのを、ずっと待ち続けているの。』
…成美が?
確かに今の私にとって唯一守りたい存在だとは思っているわ。
…だけど。
「だけど私は何も出来ないのよっ!」
戦う力もないし。
誰かを守ることだって出来ないの。
「このままだときっと成美も犠牲にしてしまうわっ!」
兄貴と愛里と同じように。
「きっと成美まで…っ!!」
ルーンに目覚めても私に出来ることは回復だけで、
戦う力はなくて誰かを守ることさえ出来ないのよ。
「私には誰も守れないっ!私には誰も救えないのよっ!!」
自分の限界を知ってしまったから。
自分自身に絶望しているの。
「生きていたって何もできないんだから…だから傍にいさせてよ…っ!」
二人と一緒にいられるのなら他には何もいらないの。
…だから、もう良いでしょ?
私はもう、自分にできることは全部したわ。
…だからもう。
『まだダメですよ。』
…どうしてっ!?
「どうして兄貴まで、私を拒絶するのよっ!?」
『何も出来なくても良いんです。薫はそれで良いんですよ。無理に戦うのではなくて、その想いを最後まで貫き通せば良いんです。』
…そんなの、ただのわがままじゃないっ!
『わがままで良いんですよ。薫の想いがいつかきっと幸せな結末に繋がると信じて、薫は薫らしく生きてくれれば良いんです。』
…だけどっ!
私が何もできない代わりに、
誰かが血で手を染めることに変わりはないわ!
すでに成美が多くの命を奪ってしまったように。
私の代わりに誰かが誰かを殺すのよ。
その現実は変えられないし、
そんな現実を見たいとも思わない。
…争いなんて、なくなればいいのに。
『その気持ちがあれば大丈夫ですよ。』
…全然、大丈夫じゃないわよ。
『大丈夫です。自分の力を信じてください。いつか願いが叶う日が来ると信じて、今は現実と向き合ってください。』
…向き合った現実が、今の状況でしょ?
『だからですよ。薫には世界を変える力があることを僕達は知っています。だから今は自分自身を信じてください。』
…私のどこにそんな力があるって言うのよ?
『出来ますよ。』
『うん。薫ちゃんならきっと出来るよ♪』
…愛里までそんなことを言うの?
『そうだよ。いつも元気で、明るくて、とっても優しい薫ちゃんを私は知ってるから。だからその笑顔で沢山の人達を守ってあげて。』
…笑顔で世界が変えられるなら、苦労なんてしないわよ。
『出来るよ。薫ちゃんなら出来る♪薫ちゃんなら必ず世界を変えられるって、私は信じてるから。』
…愛里。
「…私は…っ。」
『最後まで諦めないでください。』
『薫ちゃんなら出来るよ♪』
………。
笑顔で応援してくれる二人の想いが優しすぎて、
想いが止まらなくなって泣き続けてしまったわ。
「私は…っ。私は…っ!」
『大丈夫だよ。薫ちゃんなら必ず夢は叶えられるから♪』
『その時が来るまで、僕達が薫を守ります。』
「愛里っ!兄貴っ!」
泣き叫ぶ薫の視線の先で、
二人の姿が徐々に消え始めたのよ。
…待ってっ!!
「私を置いて行かないでっ!!」
『いつも傍にいるよ♪』
『薫の幸せを願っています』
…嫌っ!!
…嫌ああああああああああああああああっ!!!
泣き叫びながら必死に手を伸ばす。
それなのに。
私の想いは届くことがないまま、
二人の姿は見えなくなってしまったのよ。
「兄貴…っ!!愛里…っ!!」
暗闇の中で叫び続ける。
そんな私に…新たな声が届いてきたの。




