夢の中
《サイド:栗原薫》
…兄貴。
…愛里。
夢を見ていたわ。
とても大切な人達の夢よ。
「…逢いたかった。」
夢の中で呼び掛けてみる。
目の前に兄貴と愛里がいるからよ。
2人の姿を夢の中で見ていたの。
「…ずっと、逢いたかった。」
何度も想いを呟いてみたことで、
2人は微笑んでくれていたわ。
『私達はずっと側にいるよ♪』
…愛里。
以前と同じように微笑んでくれる愛里の隣では、
兄貴も私を優しい表情で見つめてくれてる。
『良く頑張りましたね、薫。薫はそれで良いんですよ。薫の決断は間違ってはいません。それは僕が断言します。薫の想いはいつでも正しいです。それを僕は知っていますから。』
…なによそれ?
一生忘れられない兄貴の声を聞いて、
泣きそうな想いを感じてしまったわ。
…馬鹿兄貴。
「死んでも馬鹿は治ってないんじゃない?」
泣きそうな想いを必死に堪えながら聞いてみたんだけどね。
兄貴は自信をもって頷いていたわ。
『薫への愛は変わりませんよ。それが僕の生きた証であり、僕の全てです。この想いが在る限り、薫を永遠に守り続けます。それが僕の望みですから。』
…永遠なんて。
どこまで馬鹿なのよ?
笑顔を絶やさずに告げてくれる言葉。
それが夢だと分かっていながらも、
涙を堪えることなんて私には出来なかったの。
「ホントに…馬鹿よ…っ。」
『ええ、馬鹿で良いんです。僕は薫を愛しています。この想いだけは例え死んでも変わりません。』
はっきりと断言してから、
兄貴は愛里を引き寄せていたわ。
『愛里ちゃんと共に、薫を守り続けます。』
…兄貴。
『ずっと、傍にいますよ。』
…死んでもまだ私を見守ってくれるっていうの?
『それが薫のためになるのなら。』
…馬鹿。
…本当に、馬鹿よ。
『それが家族というものですよ。』
………。
兄貴の優しさに何も言えなくなってしまったわ。
そんな私に、今度は愛里が話し掛けてくれたの。
『ねえ、薫ちゃん。』
…愛里。
優しく呼び掛けてくれる声が嬉しくて、
思わず何度も愛里の名前を叫んでしまったわ。
「…愛里!…愛里っ!!」
涙を流しながら必死に呼び続ける。
だけど私の手は愛里には届かないの。
「愛里っ!!!」
どれだけ伸ばしても届かない手。
そして届かない想い。
それでも。
それでも私は必死に叫んだわ。
「ずっと逢いたかったっ!!」
…ずっと逢いたかったのよ。
…ずっと、ずっと。
『泣かないで…。薫ちゃん』
必死に泣き叫ぶ私を見て、
愛里も泣きそうな表情をしてた。
『薫ちゃんに涙は似合わないよ。薫ちゃんはいつだって笑顔が一番良く似合うから…だからもう泣かないで…。』
記憶の中と同じ姿で。
そして同じ声で。
涙を流しながら私を見守ってくれていたの。
『私も徹さんもね。薫ちゃんの想いを叶えてあげたいって思ってるの。だから薫ちゃんは自信を持って前に進んでほしいな。私達がずっと傍で見守っているから、だから絶対に諦めないでね。』
「…愛里っ!!」
愛里に触れようと思って必死に手を伸ばし続けたわ。
だけどそれでも。
どれほど願っても私の手は愛里に届かなかったのよ。
「愛里っ!愛里〜〜〜〜っ!!」
死んでしまった親友に届かない想い。
それでも二人が私を想う気持ちだけは痛いくらいに伝わってくるの。
『生きてください、薫。そして僕達の分まで幸せになってください。その為に僕達は協力しますから。』
『薫ちゃんにはいつも笑顔でいてほしいから、だから泣かないでね。私達はいつも傍にいるから、だから悲しまないでね。』
「兄貴っ!!愛里っ!!!」
優しい微笑みで私を見つめてくれる二人に、
必死に手を伸ばし続けたのよ。




