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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1769/1864

何を目指すのか

《サイド:澤木京一》



…へぇ。



立地条件はともかくとして、

ギルドの内部は共和国やセルビナの魔術師ギルドとそれほど変わらないように思えるね。



決して豪華な造りではないけれど。


部屋数はそれなりにありそうだし。


入り口に張り出されていた案内図によると、

地下に魔術の訓練施設もあるようだ。



それに何より。


倉庫の数が多いような気がするから、

いざとなれば戦闘に耐えられそうなほどの物資が確保されているようだね。



イーファでの魔術ギルド本部というだけあって、

共和国と同じくらい多くの魔術師の姿も見える。



そんな魔術師ギルドに入ってからすぐに、

僕達は係員の案内を受けてギルドの2階にある会議室へと移動することになった。



「こちらの部屋にどうぞ。」


「あ、はい。」



案内された部屋が会議室なのかな?


今はまだ誰もいないみたいだけど。


それなりに広さがあって、

ゆっくりと体が休められそうな気がする。



「ありがとうございます。」


「いえいえ。」



わざわざ案内してもらえたことで、

ちゃんとお礼を言っておいたんだけど。


無人の部屋に歩みを進めるシェリルは、

慣れた雰囲気で係員に問い掛けていた。



「それで、今回はどれくらい集まるの?」


「すでに多くの仲間達が行動していますが、これからみなさんを現地に案内するのは桐島亮平きりしまりょうへいさんになります。」



…桐島亮平?



聞いたことがない名前だけど、

シェリルは知っている様子だった。



「ふ~ん。わざわざ私達の為にイーファ最強の魔術師を残してくれているのね〜。」



…イーファ最強?



「その人はシェリルよりも強いのか?」


「え?あ~、そうね。京一は知らないでしょうけど。亮平は超一流の密偵よ。戦闘技術は私よりも上かもね。まあ、魔術師としては平均よりも上っていうくらいだけど。」



…ん?



密偵としては超一流だけど。


魔術師としては平均より上?



…ということは?



僕や御堂龍馬のように前衛主体ということかな?



「でもまあ、普通に戦えば京一が勝つんじゃない?私は相性が悪いから勝ち目が薄いけど、京一なら何とかなると思うわよ。」



…えっと。



どうなんだろうか?



会ったことがない人と比べられても困るけれど。


両方を知るシェリルがそう言うのなら、そうなのかな?



「まあ、何を目指すのかにもよるけどね。」



…何を目指すのか?



「どういう意味なのかが分からないんだけど?」


「…う~ん。説明が難しいところだけど。京一としては戦士として勝ちたいの?魔術師として勝ちたいの?それとも試合で勝ちたいの?真剣勝負で勝ちたいの?」


「…え?いや、そこまで考えてはいないけれど…。」


「でしょうね。だけど質問に対する答えなんて、何を賭けて何を目的にしたいの?っていう根本的な部分で変わるものなのよ。」



…あ、ああ、なるほど。



どういう勝負で勝ちたいのか、ということか。



「地位とか、名誉とか、色々とあるでしょうけれど。何が欲しくて、どうなりたいのかをはっきりさせないことには勝敗なんてつけようがないでしょ?」


「ああ、まあ、そうだね。」



…確かに。



単に力比べをして勝ったとしても、

それで何かが変わるわけじゃないからね。



何を目的とするかによって物事の価値は変わってくるんだ。



「亮平はこのギルドで戦闘部隊の責任者として活躍する有能な人物だけど。京一が勝負を挑んで勝ったところでただそれだけの話でしかないわ。京一が代わりに責任者になれるわけでもないし、このギルドで偉そうな態度がとれるわけでもないのよ。」


「あ、いや、別にそんなつもりは全くないんだけど?」


「それは分かってるわよ。単なるたとえ話よ。」


「あ、ああ、そうか。」


「ええ。…ということで、最初の質問に戻るんだけど。私と比べてどっちが強いかなんて、それを聞いてどうするの?っていう話になるわけよ。」



…ああ、なるほど。



確かに僕の質問は曖昧だったかもしれない。


何と比べて強弱を判断するのか?という部分が欠落していたんだ。



「その人はどういう人なんだ?」


「ん~、そうね~。ざっと説明するなら若き天才?って感じでしょうね」



何故か疑問形で説明してくれたんだけど。


そのあとに続いたシェリルの話によると桐島さんの戦闘能力はイーファのギルド長を凌ぐほどで、

密偵部隊の責任者として活躍している魔術師らしい。


まだ28歳の若さで実質的にイーファ内での戦闘指揮権を持っている有能な人物だそうだ。



これまでにも何度か共に行動した経験があるシェリルにとって、

桐島亮平という人物はイーファにおいて誰よりも頼りになる存在だと言っていた。



「要するに最強の切り札を残してるっていうことよ。」



微笑むシェリルを見て、

道案内をしてくれた係員も笑顔で説明を続けてくれた。



「共和国からの応援部隊としてシェリルさんが来られるという話でしたので、桐島さんが自ら案内役を望まれていました。」


「ふふっ。亮平らしいわね。だけど責任者なのに仕事を後回しとか、それなりに問題行為よね?」


「ええ、まあ…そうですね。」



シェリルの指摘に係員は苦笑しながら頷いている。



「ですが、お二人の仲の良さはここでは有名ですので、お二人に関しては誰も口出しをしませんよ。本来ならまっさきに現地で指揮をとって頂きたいのですが、こればかりは仕方がありませんから。」



…仲が良い?



それはどういう意味だろうか?



…もしかして恋人とかそういう意味なんだろうか?



少し気になるけれど。


シェリルに問いかける前に、

係員が話を続けてしまっていた。



「それはそうと、桐島さんは午前中は他に用事があるそうですので今はまだここにはいません。一応、お昼までには戻るという話でしたので、それまでしばらくお待ちください。」


「ええ、分かったわ。」



係員の説明に笑顔で答えてから、

シェリルも室内へと歩みを進めていく。



「亮平とは久々に会うけど、元気にしてるのかしら?」



…独り言なのかな?



誰にともなく呟くシェリルの言葉が聞こえたことで、

もう少しだけ質問をしてみることにしたんだ。



「シェリルは何度もここに来てるのか?」


「ええ、そうよ。前回イーファに来たのは3ヶ月くらい前になるかしら。」



…3ヶ月前か。



その頃の僕は何をしていたのかな?



はっきりとは覚えていないけれど。


特に代わり映えのない日々を過ごしていたように思う。



「ここに来るのは7度目だけど。毎回、亮平と関わっているから、それなりに仲は良いわよ。」


「へえ、そうなんだ。」



どの程度の仲なのか?とか、

聞いてみたい気がするけれど。



…それこそ、聞いてどうするんだ?っていう気がするから聞けないよね。



今はまあ、とりあえずは黙って様子を見るべきかな?



肝心の桐島さんが不在の状況であれこれ話をしていても仕方がないからね。



大人しく会議室で桐島さんが訪れるのを待つことにしたんだ。




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