即死級の罠
《サイド:澤木京一》
…うーん?
いまいち状況がよく分からないけれど。
どうやらイーファの魔術師ギルドの入口に着いたらしい。
時刻は午前10時を過ぎた頃だろうか?
ただの直感だけどね。
まだまだお昼には遠いと思うんだ。
道案内として洞穴に近付いたシェリルは、
僕達を率いて洞穴の内部へと歩みを進めていく。
「この洞穴を抜けた先に目的の魔術師ギルドがあるのよ。」
…この奥に?
迷わず洞穴の中へと歩みを進めるシェリルを追い掛けて、
僕達も内部に歩みを進めることになった。
だけど、洞穴の内部は思っていた以上に暗くて、
内部がどうなっているのか確認するのは困難だったんだ。
「…暗いな。」
「…仕方がないわね〜。ライト・ボール!」
素直な感想を呟いた瞬間に、
シェリルが光の球を生み出して洞穴の内部を照らしてくれた。
「これで良い?」
「あ、ああ。ありがとう…。」
体力的な疲労のせいであまり大きな声では言えなかったけれど。
それでもシェリルは気にする様子もないまま僕達に話し掛けてくれている。
「一応説明しておくけれど、ここには侵入者が来ても対処できるように幾つもの罠が仕掛けられているから、間違っても私が進まない方向には行かないでね。」
…えっ!?
うわぁー。
…やっぱりそういうのがあるのか。
なんとなく嫌な予感はしていたんだけど。
わざわざ分かりにくい場所に入口を用意しているだけあって、
侵入者に対する対策も用意されているらしい。
…間違いなく。
魔術師ギルドに忍び込もうとする敵対者の侵入防止策だろうね。
その為の罠だと考えてみたんだけど。
「まあ、京一達が気にする必要はないけどね。ある意味…盗賊対策とでも思っておけばいいわ。」
…ん?
…ああ、なるほど。
イーファの軍隊や魔術師狩りの部隊だけではなくて、
盗賊や山賊もいる可能性があるのか。
…あれ?
…でも、それなら、ある意味ってどういうことだろうか?
単に盗賊対策という意味じゃないような気がする。
「他にも敵がいるような言い方だね?」
「ええ、いるわよ。京一達が遭遇したウィッチクイーンの部隊とかもそうだけど。敵対関係にある組織は少なからず存在しているわ。」
…ああ、そうか。
そういう意味なのか。
それなら理解できる。
魔術師だからと言って全てが味方とも言い切れないんだ。
「やっぱり敵対組織の侵入防止ということか…。」
「ええ、そうよ。だからこそ即死級の罠もあるから絶対にはぐれないようにしてね。」
「あ、ああ…分かったよ。」
シェリルの忠告には素直に従うことにしている。
逆らったところで良い結果になることはないだろうからね。
「大人しくシェリルについていくよ。」
「ええ、それでいいわ。」
説明を終えたシェリルが僕達を引き連れながら洞穴の奥に向かって歩きだす。
「まあ、迷わず進めば10分もかからないはずよ。」
黙々と歩みを進めるシェリルは、
洞穴の内部に幾つもある分岐点で何かを見分けながら立ち止まることなく急ぎ足で奥へと進んでいくんだ。
…と言うか、何を見分けているんだ?
僕には分からないけれど。
シェリルには何らかの判断材料があるらしい。
…それに分岐が多すぎる。
一体、この洞穴は幾つの通路があるんだろうか?
疑問を感じて戸惑ってしまう。
だからこそ次々と現れる分岐を迷わず進むシェリルに尊敬の眼差しを向けてしまう。
…経験者がいるのは心強いな。
まるで御堂龍馬が側にいるような安心感を感じる瞬間だった。
敵としては厄介でも。
味方としてこれほど心強い存在はなかなかいないと思う。
そんなシェリルの存在を有り難く思いながら僕達も歩みを進めていく。
…そうして。
シェリルの宣言通り、
10分もかからない内に洞穴の先に光が現れたんだ。
「あそこから外に出れば魔術師ギルドにたどり着くはずよ。」
出口に向かうシェリルを追って足早に洞穴の内部を進み、
僕達は無事に洞穴を通過した。




