甘い世界じゃない
《サイド:シェリル・カウアー》
………。
イーファの魔術師ギルドを目指して黙々と歩みを進めていく。
出来るかぎり率先して京一達の先頭を進んでるんだけど。
…さすがにみんな本当に限界の様子ね。
京一だけじゃなくて、
5人全員が無言で俯いてしまっているわ。
…でもね~?
たかだか移動だけで力尽きてもらっても困るのよ。
ここに来た目的はあくまでも『戦闘』なんだから、
戦いの前から弱音を吐くようでは話にならないわ。
…せめてギルドに着くまでは頑張ってもらわないとね〜。
歩く速度を緩めずに進み続ける。
表情で疲労を訴える京一達に休憩時間を与えたい気持ちはなくもないけれど。
…あまり気を遣って甘やかすのも良くないし。
修業を目的としている京一達に優しく接する必要なんてないわ。
徹底的に追い込んで自分自身の限界を乗り越えさせる必要があるからよ。
まだまだこの程度で音をあげられるほど甘い世界じゃないの。
…共和国の外の世界は、ね。
京一達はまだ何も知らないでしょうけど。
共和国の外は魔術師にとって地獄の世界なのよ。
持って生まれた力のせいで忌み嫌われ、
抵抗も許されずに虐殺される悪夢の世界。
だから今この瞬間にも世界の各地では次々と魔術師達が殺されているはず。
魔術という力があるせいで、
今この瞬間にもどこかで誰かが殺されているの。
…だからこそ私は魔術師狩りを絶対に許さない!
突然、迫り来る脅威。
一方的に行われる殺戮において、
並の魔術師では生き残るなんて不可能よ。
一度狙われれば、
ほとんどの魔術師が死んで屍を曝すことになるの。
その惨劇を避ける為には各国の魔術師ギルドによって保護を受けるか、
共和国に逃げ込むことでしか生き延びるのは難しいでしょうね。
…でも、ね。
各国の攻撃を受けない為に魔術師ギルドは僻地に秘匿されているから、
自力でたどり着くのは不可能に近いわ。
だけど、だからこそ魔術師ギルドは存続しているのよ。
そうして国内をくまなく捜索して、
各地の魔術師達の保護を行っているの。
その結果として共和国に各地の情報も届けられているのよ。
…で、肝心の魔術師ギルドはもうすぐのはずなんだけど。
周辺に視線を向けてみる。
ギルドへの入り口は定期的に変更されるから、
いつもいつも同じ場所から出入り出来るわけじゃないのよ。
…情報では、この辺りのはずなんだけど?
ぐるっと辺りを見回してみたことで、
私の視線は、とある一カ所で止まったわ。
「あったわよ!」
「「「「「?」」」」」
笑顔で告げてみたことで、
京一達は即座に私の視線の先を目で追ってる。
だけど私が何を見つけたのかは理解できない様子ね。
だから率先して目的地へと歩み寄る。
「ここが入口なのよ。」
私が見つめる視線の先。
そこにはね。
小さな洞穴があるの。




