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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1755/1864

みんなのおかげで

《サイド:常磐成美》



巨大軍船の船首側。


魔術を使って倒れた薫の傍に寄り添う私は、

意識を失ってしまった薫の手をぎゅっと握り締めました。



「…薫。」



何度呼び掛けてみても薫は何も応えてくれません。



これが魔力を失った影響なのでしょうか?


意識も失っているようで、

起きてくれる様子はありません。



「ねえ…薫。薫の想いは無駄にしないからね。」



眠る薫に話しかけながら、

左手で掴むルーンに視線を向けました。



これはお姉ちゃんのルーンです。



名前はマテリアル。


大きな星を冠していて、

きらびやかなの輝きを放つ長い杖です。



お姉ちゃんが持っていても身長を越える長さみたいですけど。


私が持つと私の身長よりも杖の方が圧倒的に長いと思います。



…綺麗な杖だよね。



左手で杖を握り締めながら、

セルビナ軍の船に視線を向けました。



今もまだ2隻の船が迫ろうとしているからです。



「…薫の想いは無駄にしないよ。」



呟いてから魔術を展開します。



次々と迫り来る陰陽術を防御結界で防ぎながら反撃の準備を始めました。



「薫の想う世界を私も見てみたいから…だから今は薫の代わりに戦うね。」



倒れた薫を残して立ち上がります。


そうして一人でセルビナ軍と立ち向かうことにしたんです。



誰の援護も受けずに。


誰の手も借りずに。


薫の想いを叶えるために戦うことにしました。



「もう誰も…傷付かなくて良いんだよ。」



大切な人を失った悲しみを思いながら、

ルーンに魔力を込めていきます。



「もう誰も泣かなくて良いんだよ。」



薫の想いを実現する為に。


攻撃魔術を展開しました。



「マスター・オブ・エレメント!!!」



生み出されるのは5つの光です。



「もう誰も、死なないで…。」



…お姉ちゃん。


…翔子さん。



私はもう、誰かを失うのは嫌だよ。



…薫。


…そして名前も知らない誰かさん。



私に魔力を分け与えてくれた人にも想いを込めながらルーンの力を解放します。



…みんな、ありがとう。



「みんなのおかげで私は戦えるんだよ。」



呟いてから発動したマスター・オブ・エレメントは、

海面すれすれを突き進むことで接近していたセルビナの軍船に深々と突き刺さりました。



何人もの想いを受け継いで放つ魔術が軍船の1隻を海に沈めたんです。



「船がやられたっ!!急いで退避しろーーっ!!!」


「逃げろーーーっ!!!!」



沈んで行く船から慌てて逃げ出す陰陽師さん達。


その混乱を気にする暇もないまま最後の船に狙いを定めます。



「この距離なら外さないよ。」



接近する海軍船から数え切れないほどの陰陽術が降り注ぎますが、

全ての攻撃を結界で防ぎながら再び魔術を展開しました。



「マスター・オブ・エレメント!!!」



再び生まれる5色の光に想いを込めて、

最後の攻撃を行います。



「これで終わりですっ!!」



全力で放つマスター・オブ・エレメントによって、

最後の海軍船も致命的な被害を受けて海へと沈み始めました。



「くそぉぉぉっ!!!!」


「逃げろーーーっ!!!」



大混乱となって海に落ちていく陰陽師さん達。


西側から迫りつつあった5隻の海軍船は、

私の攻撃によって全て海に沈んだはずです。



そして数千の陰陽師さん達が海に落ちて必死に助けを求める姿を眺めながら小さく息を吐きました。



…大丈夫。


…みんな生きてるよ。



誰も死んでないはずです。



薫が魔術を展開する前に死亡した人達に関してはどうしようもないですけど。


それ以降の死者はいないはずです。



…これで良いんだよね?



セルビナ軍の接近は防ぎました。



まだまだ安全とは言い切れませんけれど。


ひとまず戦闘を終えたことで、

薫の傍に戻って隣に寄り添いました。



「ねえ、薫。薫の夢は私が叶えるからね♪」



…だから。



「だから今はゆっくり休んでいてねっ♪」



声をかけながら眠っている薫と手を繋ぎ合わせました。



海に落ちた陰陽師さん達は共和国の海兵さん達に任せて、

私は薫の傍に寄り添い続けることにしたんです。



「薫はずっと…ずっとそのままでいてね♪」



薫の無事だけを一心に願いながら、

周囲の戦闘が終わるまで薫の傍に寄り添い続けることにしました。



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