標的は一つ
《サイド:鈴置美春》
…う~ん。
「とりあえず私達はどうするべきでしょうか?」
「まあ、出来る限り死者を出さないように心掛けるしかないんじゃない?」
今後の方針に疑問を感じて言葉にしてみると、
すぐに和泉さんが答えてくれたわ。
…まあ、それはそうなんだけどね。
実際問題として、
何もしないわけにはいかないし。
前方から迫るセルビナ軍の艦隊は容赦なく攻撃してくるから対処法を考える必要はあるのよ。
「まあ、出来る限り…だけどね。」
…ですよね〜?
自信なく呟く和泉さんに苦笑しながら、
改めてセルビナ軍に向けてルーンを構えることにしたの。
「戦うしかない以上…とりあえず今は攻撃を続けますね。」
戦いが回避できないのなら、
まずは戦闘を終わらせる必要があるのよ。
「栗原さんの理想は私の理想でもありますから、私としては心から賛同します。」
だからこそ。
とある一点に狙いを定めることにしたの。
…と、同時にね。
海から救出されてから援護を行ってくれている海兵達にもお願いすることにしたわ。
「出来る限り船を狙ってください。そして一人でも多くの人達が生き残れるように…協力してください。」
「ええ!分かりました。」
「喜んで協力しますよ!」
「そのほうが気が楽ですしね。」
私のお願いに反論する人はいなかったわ。
みんな笑顔で引き受けてくれたのよ。
そんな彼等の協力を得た私は、
漁船そのものに狙いを定めることにしたの。
「戦争だからといって人が死んでいくことが当たり前だなんて思いません。例え今は敵対していても…一人でも多くの人達を守れるのなら、それがきっと一番良い結果だと思いますから。」
「うんうん!それで良いんじゃない?」
私の想いを聞いた和泉さんは微笑んでくれていたわ。
馬鹿にしたり笑い飛ばしたりせずに、
笑顔で受け入れてくれたのよ。
「鈴置さんは優しいのね〜。」
「い、いえ…。」
そんなふうに言われてしまうと照れ臭いけれど。
誰だって殺し合いなんてしたくないって思ってるはずよね?
「世界平和なんて大げさなことは言いませんけど…。」
だけどね。
「ほんのちょっとの努力で、仲良くなることは出来ると思うんです。」
そう思うからこそ。
ついさっきまでギリギリの思いで戦っていたのが嘘だったかのように、
今では穏やかな気持ちでセルビナ軍と向き合うことができているのよ。
「殺し合いは趣味じゃないですけど…。こういう戦いなら悪くないと思うんです。」
呟きながらも展開した魔術が漁船の1隻を海に沈めたわ。
だけどね。
兵士に怪我はないはずよ。
船だけを狙いすまして攻撃したから怪我人はいないはず。
「栗原さんの想いを無駄にはしません。」
私も理想を信じてみたいから、
戦いを終わらせるために攻撃を再開したの。




