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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1751/1873

終わりの条件

「まあまあ、つばめはともかくとして。大きな意義とはどういう意味でしょうか?」



冷静な表情で問い掛けてくる藤沢君はやはり頼りになると思う。


常に取捨択一を行えるのは研究者として有能な証だからだ。



「もう一度言うが、おそらく戦争は止まらない。だが栗原君の行動をきっかけとして一部の者達は争いを続けることに対して疑問を感じるはずだ。それは小さなきっかけであり、決して戦争を止めるほどの力にはならないかもしれないが、それでもその小さなきっかけが後々重要な意味を持つことになる。」


「それはどういう意味ですか?」



…意味、か。



どう説明するべきだろうか?



再び問い掛けられた疑問に答える前に、

俺も藤沢君に問けてみることにした。



「説明の前に聞くが、きみは戦争というものをどう考える?国と国が戦い、勝敗を決すればそれで終わると思うか?」


「………。」



俺の問い掛けを聞いて、

藤沢君は首を傾げながら考えている。


どうやらあまり深くは考えていなかった様子だな。



「違うのですか?」



やはり今後の情勢までは考えていなかったのだろう。


単純に国同士が戦って、

どちらかが勝利した時点で戦争が終わると考えているようだが、

その考えは浅はかというものだ。



「残念だがそんな簡単な話ではないのだ。勝敗程度で戦争は終わりはしない。」



本当の意味での終わりとは、

どちらかが滅びることでしか有り得ないからだ。



「アストリア王国のように敵対する全ての者達が全滅しない限り、終わりなど訪れない。」


「それではどうすれば?」



…そう、そこだ。



その問い掛けこそが重要なのだ。



「極論すれば、セルビナ王国を滅ぼすことでしか終戦は有り得ないことになる。」


「………。」



俺の言葉を聞いて黙り込む藤沢君だが、

もちろん俺としてはそこまで無茶をするつもりはない。



「一応、言っておくが、俺達の目的はセルビナ王国の滅亡ではない。」



もちろん戦争を始めた以上は、

それ相応の責任は果たしてもらうつもりだがな。



「セルビナ王国の全ての者達を根絶やしにするつもりなど俺達にはないのだ。」



これからセルビナ王国にどう責任をとってもらうのかは、

戦争が終わってからでなければ決めようがないものの。


現時点ではセルビナ王国の軍事力の解体が最低条件となるだろう。



場合によっては共和国の属国となるか、

あるいは共和国に吸収されて領土を失うか。


そこまで突き詰める必要があるのかもしれないが、

ここで再び問題が発生することになってしまう。



「セルビナ王国を潰して共和国に取り込んだとしても反抗勢力はどうしても残ってしまうだろう。それこそセルビナ王国の全ての人々を全滅させない限りは反乱を企てる者が必ず現れるはずだ。」



アストリア王国と同様に、

完全な滅亡を迎えない限りは抵抗勢力が必ず現れるのだ。



「…とは言え、共和国としてはそこまで残虐な手段をとるつもりはない。」



いくら平和の為と言えども、

そこまでしてしまえば共和国は完全に憎まれる立場となってしまうからな。



共和国の存続の為に他国を一掃では魔術師狩りを行う他国と何も変わらないのだ。


それでは何も解決しないだろう。



「だからこそ、ここで栗原君の行動に大きな意義が生まれる。」



戦うことで得られる未来ではなく、

戦わないことで得られる未来の方が遥かに価値が高いのは当然だからな。



「栗原君の想いによって僅かでも戦争の無意味さを実感する者が現れれば、余計な争いは減少するだろう。」



無駄に命を犠牲にする事態は避けられるはずだ。



「彼女の行動は無謀であり、危険であるからこそ、人の心を動かせる価値があるとも言えるのだ。」



戦争の愚かさを知り。


命の大切さを知れば争いは必然的に失われる。



栗原君の行動は純粋であるからこそ人の心に響く。



「栗原君の行動によって戦争に疑問を感じる者が現れるはずだ。今はまだ一握りの存在かもしれないが、その小さなきっかけがセルビナ王国全土に広まれば、いずれ争いはなくなるだろう。」



それが夢や希望で終わるのか?


それとも現実として実現するのか?



それは俺にも分からない。


どちらかと言えば奇跡的とも言える夢物語かもしれないとも思う。



…だが、それでもだ。



栗原君が望んだ幸せな結末を俺も見てみたいと思うのだ。



「きみは見てみたいと思わないか?栗原君が望む世界が実現できるモノかどうか?理想の答えを見てみたいとは思わないか?」


「………。そうですね。」



俺の問いかけに藤沢君は笑顔で頷いてくれていた。



「私は良いと思います。出来ることなら私も人を殺すのは避けたいと思いますから、だから私も栗原さんの理想には賛同します。」



争いのない世界にたどり着きたいと藤沢君も願うようだ。



例えそれがどれほど難しいことであっても、

その世界にたどり着きたいと願う気持ちは同じだった。



「素敵な未来だと思います。」


「ああ、そうだな。」



笑顔で告げる藤沢君に俺も笑顔で答えておく。



「今回の栗原君の行動は局地的に見れば明らかな問題行為だろう。」



西園寺くんが指摘するように、

違反行為と表現してもいい行動だ。



「だが、大局的に見れば大きな意義がある。この戦いにおいて彼女の行動は大きな犠牲を生むかもしれないが…彼女の行動こそが終戦へのきっかけになると俺は考えている。」



この海戦に打ち勝ち。


セルビナ王国を占領した時点において栗原君の理想に賛同する者が一人でも多く現れれば、

それだけでも共和国は平和へと近付くことが出来るはずだ。



「和平交渉という一点において、栗原君の行動には大きな意味があるだろう。」



だからこそ栗原君を褒めたたえてから、

再び西園寺君に問い掛けることにした。



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