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THE WORLD  作者: SEASONS
4月21日
1743/1879

守られてばかり

「成美っ!?」



必死に呼び掛けてみるけれど、

意識を失った成美は目を覚まさなかったわ。



全ての魔力を失って昏倒状態になった以上、

自力で目覚めることは出来ないからよ。



「成美っ!!!」



必死に叫んでみても成美は目覚めない。


こうなってしまったらもう、

私にもどうにもできないのよ。



…くっ!!



悔しさを感じて唇を噛み締めてしまう。


誰よりも守りたいと思っていた成美が倒れていて、

私だけが残されてしまったから。



その事実に。


その現実に。


悔しさを感じてしまったの。



…私はまたっ!!



また残されてしまったのよ。



兄貴と愛里が私を守るために旅立ったように。


成美もまた私を守って倒れたの。



…まだ死んだわけじゃない!


…死んだわけじゃないけどっ!!



それだけで解決出来る問題じゃないわよね?



…私は!


…私はまた何も出来ないままっ!!



戦いでは役に立つことが出来ずに、

成美を守ることさえ出来なかったのよ。



その結果として、

今の私にとって何よりも大切だと思える成美が倒れたという事実に悔しさを感じてしまったの。



…私はまた!!



兄貴を失って。


愛里を失って。


そして成美まで犠牲にしかけているのよ。



その事実に…どうしようもない悔しさを感じてしまう。



…いつもそうっ!


…私は守られてばかり!!



馬鹿兄貴に。


愛里に。


クイーンに。


そして成美にも。



…守られているだけなのよっ!!



何も出来ない私一人だけが残される絶望。


その悲しみの中で涙をこぼしてしまったの。



…ごめんね、成美。



「本当なら私が成美の代わりに倒れていたかったのに…。」



私が成美を守りたかったのよ。



…それなのにっ!



現実は真逆だったわ。



成美を守るはずだったのに、

成美に守られているの。



その現実を思い知ってしまったことで、

私は私自身の存在を否定したくなってしまったのよ。



…私がいなければっ!



私がいなければ誰も苦しまずにすんだのにっ!!



私がいなければ兄貴は死なずに済んだのよ。


私がいなければ愛里も死なずに済んだのよ。



そして。



私がいなければ成美も倒れなかったはずなの。



あるいは私が戦っていれば?


武器をとって戦っていれば?



誰も傷付かずに済んだのかもしれないわね。



私が何もしないから、

私の大切な人達が倒れていくのよ。


私が戦わないから、

大切な人達が犠牲になっていくの。



負の感情に染まり始める心が、

自然と右手を服の中へと動かしてしまう。



…武器はある。



私にはまだ武器があるの。



天城君が残したナイフに手を伸ばして、

心を闇に染めていく。



…私が戦えば、もう誰も傷付かないのよ。



私が死ねば、もう誰も犠牲にならないはず。



…ごめんね、成美。



私のせいで、苦しい思いをさせて…ごめんね。



意識を失ってしまった成美の小さな体を力一杯抱きしめてから、

一人きりで立ち上がることにしたわ。



戦う覚悟を決めて、

命を奪い合う戦いに立ち向かうことにしたのよ。



…成美、ばいばい。



この手を血と罪で染め上げる覚悟を決めて別れを告げる。



「ごめんね、成美。私のせいで苦しい思いをさせて…ごめんね。」



何度も謝ってから、

残された魔力をナイフに注ぎ込む。



この手に憎悪を込めて。


この心に絶望を抱えて。


人の命を奪うという覚悟を決めたのよ。



「戦わなければ誰も救えないのよ!例えこの心が壊れたとしても…戦わない限り誰も救えないの!!」



自分自身の手を汚さなければ誰も救えない。


その事実を言葉にしてから、

ナイフを握る手に力を込めて船の尖端に歩みを進めたわ。



倒れた成美を残して、

一人で立ち向かうことにしたのよ。



…海を凍らせて走り抜ければ、セルビナの船に乗り込めるはず。



距離は目測で数百メートルほど離れているけれど。


決して辿り着けない距離ではないわ。



「私には兄貴と愛里がいるのよ。」



私を守ってくれる二人が限り、

私は絶対に倒れないはずだから。



「例えどれだけ遠くても、必ずたどり着いて見せるわ!」



成美の活躍によってすでに3隻の船が海に沈んでる。



…だけど、まだ2隻の海軍船が残っているのよ。



まだ2000人の陰陽師が2隻の船に残っているの。



「今度は私が戦うわ。私がこの手で…」



たった一人での特攻。


最後の抵抗を実行する為に船の尖端に立つ。



ここから海を凍らせて敵船に乗り込むこと。



…もうそれしか方法はないのよ!



「成美は殺させないっ!もう誰もっ!誰も殺させないっ!!」



想いを込めて戦う覚悟を決める。



…なのに。



私が走り出す直前になってから。



「…ダメだよ。」



背後から一人の少女が話し掛けてくれたのよ。



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